硫化アンモニウム(読み)りゅうかアンモニウム

精選版 日本国語大辞典 「硫化アンモニウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうか‐アンモニウム リウクヮ‥【硫化アンモニウム】

〘名〙 (アンモニウムはammonium) アンモニウムの硫化物。普通、化学式(NH42Sで表わされる一硫化アンモニウムをさす。黄色個体。水に溶けやすく不安定で分析試薬や写真現像液に用いられている。
※写真鏡図説(1867‐68)〈柳河春三訳〉二「硫化アンモニウム液を注ぎて黒色を得るに至る」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

化学辞典 第2版 「硫化アンモニウム」の解説

硫化アンモニウム
リュウカアンモニウム
ammonium sulfide

(NH4)2S(68.14).それぞれ水をまったく含まないアンモニア硫化水素とを,交互に-18 ℃ 以下に冷却したジエチルエーテルの中に吹き込むと得られる.吸湿性の無色の針状結晶.-18 ℃ で分解がはじまり,黄色となる.冷水,液体アンモニアに易溶,エタノールに可溶.熱水では分解する.水溶液は空気酸化して黄色となる.加水分解度がきわめて大きく,水と反応して,硫化水素アンモニウムNH4HSを生じ,アルカリ性を示す.硫化アンモニウム水溶液に硫黄を溶かすと多硫化アンモニウム(NH4)2Sn(n = 2,3,4,5,9)の混合物を生じ,黄色を呈す.酸を加えると硫化水素を発して硫黄を析出する.分析試薬,殺虫剤,写真の現像液,黄銅青銅の表面着色処理剤などに用いられる.[CAS 12135-76-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

硫化アンモニウム
りゅうかあんもにうむ
ammonium sulfide

硫化水素のアンモニウム塩。化学式(NH4)2S、式量68.1。アンモニア水に硫化水素を飽和させてつくった硫化水素アンモニウムNH4HSの水溶液に当量のアンモニア水を混合し、零下18℃に冷却すると、針状結晶として析出する。ただし、つねに硫化水素アンモニウムを過剰に含むため純粋には得られない。なお、もとの混合液はアンモニア液として市販されている。硫化アンモニウムは黄白色のきわめて分解しやすい固体で、水によく溶ける。水溶液は無色でアルカリ性を呈し、硫化水素臭とアンモニア臭を伴う。空気に触れると速やかに黄色に変わり、ポリ硫化物(NH4)2Sx(xは2、3、4、5、9など)とチオ硫酸塩硫酸塩に分解する。分析試薬のほか写真の現像にも用いられる。

[鳥居泰男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android