矢・箭(読み)や

精選版 日本国語大辞典 「矢・箭」の意味・読み・例文・類語

や【矢・箭】

〘名〙
① 武器の一つ。弓弦(ゆづる)につがえて射るもの。矢柄(やがら)の本(もと)には鳥の羽をつけ、末には鏃(やじり)をつける。長さは手の握り数で普通一二束(つか)、長いものは一五束から一八束に至る。矢竹の節の数から四節篦(よふしの)と三節篦があり、前者は羽中(はなか)・袖摺(そですり)篦中(のなか)・射付(いつけ)または菅(すげ)の四節、後者は羽中を除いた三節である。糸または革で所々を巻き、位置によって筈巻(はずまき)・口巻(くつまき)・根太巻(ねたまき)などの名がある。弦を受ける所を筈(はず)といい、節(ふし)筈・角(つの)筈などがある。羽はふつう三片であるが、四片または二片のものもあって、三立(みつたて)・四立(よつたて)・二立(ふたつたて)という。用法・作り方により征矢(そや)・的矢(まとや)野矢・雁股(かりまた)鏑矢(かぶらや)・神頭(じんどう)蟇目(ひきめ)などの種類がある。
正倉院文書‐天平六年(734)尾張国正税帳「箭伍拾具料稲漆束伍把」
万葉(8C後)三・三六四「大夫(ますらを)の弓上振り起し射つる矢(や)を後見む人は語り継ぐがね」
② 特に①の、射られて空中を飛ぶ状態のもの。非常に速いことをたとえていう。→矢の如し
③ 堅い木材や石を割るのに用いる楔(くさび)。割ろうとするものの小口に挿し、玄翁(げんのう)の類で打ち込んで割る。ひめや。また、杭(くい)の類をいう。〔随筆・凌雨漫録(1804‐30頃か)〕
④ (戦場では①が多数飛び交うところから) 催促詰責抗議などを激しく、また、たて続けにする状態をいう語。→矢の催促矢の使い
⑤ 詰責、攻撃などの方向。ほこさき。
⑥ 紋所の名。①を組み合わせた形にして図案化したもの。一つ矢、違い矢、並び矢、八つ矢車などがある。
浄瑠璃の節章の一つ。激しさを強調するために用いる曲節で強く鋭い曲調。
※浄瑠璃・義経千本桜(日本古典文学大系所収)(1747)二「平家の大将知盛とは其骨柄に」

さ【矢・箭】

〘名〙 矢の古称か。
※万葉(8C後)一三・三三三〇「鮎を惜しみ 投ぐる左(サ)の 遠離り居て」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android