小口(読み)こぐち

精選版 日本国語大辞典 「小口」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぐち【小口】

〘名〙
① 切ったところ。切り口。切断面。横断面。切れ端
咄本・高笑ひ(1776)虚空「『御月さまはそばで見たら、どれほど有らうの』『あれは十方もなく長い物だ』『何さ丸いによ』『何さあれはこぐちだ』」
② 物事のはじまり。きっかけ。いとぐち。はじめ。
※浮世草子・男色十寸鏡(1687)上「いかな男をもこぐちからひとのみにしてのあいさつ也」
③ 小区分。小さな分け方。わずかなところ。小さな部分
④ 奉書、書物などの紙の切り口。書物の背の部分以外の三方をいい、上・下を天・地、背の反対のところを前小口という。
※実隆公記‐文明一七年(1485)二月一〇日「三十冊一帖々々の小口にいろは文字書之」
⑤ ものの端。先端。
※滑稽本・古朽木(1780)二「新川新堀の問屋の数、両岸の蔵の小口(コグチ)にても知るべし」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「葱を小口(コグチ)からざくざくに切って」
⑥ 小さな口。物を食べるときなどの小さな口つき。
日葡辞書(1603‐04)「Coguchini(コグチニ) クウ〈訳〉少しずつ食べる」
⑦ 小さな入口。また、ほんの入口のところ。
長唄越後獅子(1811)「室の小口に昼寝して」
⑧ 少しの量。金などの少額
浄瑠璃伽羅先代萩(1785)八「何と御覧じたか。身動きならぬ此一通。ちょっと小口(こぐち)がこんな物さ」
⑨ 取引関係で、少額の売買取引をいう。〔取引所用語字彙(1917)〕
⑩ 江戸時代、江戸の町方に政令が順達される順序として、最初に通達を受けることにきめられている名主組合。〔市中取締類集‐名主取締之部八冊之内一・四・天保一四年(1843)正月一一日〕
⑪ ちょっとした弁才のある口ぶり。→小口をきく
紫式部日記(1010頃か)寛弘七年正月一五日「うへは、御直衣、こくち奉り」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「小口」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぐち【小口】

切った所。切断面。切り口。
書物の、の部分を除いた三方の辺。上辺の天、下辺の地、背の反対側の前小口のこと。また、特に前小口をいう。
事の始まり。端緒。いとぐち。「話の小口
扱う金額数量の少ないこと。「小口預金」⇔大口
虎口こぐち」に同じ。
小口袴こぐちばかま」の略。
[類語]切れ目分け目裂け目切れ口割れ目継ぎ目節目ひび割れひび亀裂ミシン目少額低額少し少ない少しく少少ちょっとちょいとちとちっとちょっぴりいささかいくらかいくぶんやや心持ち気持ち多少若干二三少数少量僅僅わずか数えるほどたったただたかだかしばらくなけなしささやか一抹心ばかり印ばかり形ばかり低い手薄少なめ内輪軽少軽微微弱微微微少僅少些少最少微量ちびちび一つまみ一握り一抹一息紙一重雀の涙鼻の差残り少ないちょこっとちょこんとちょっこりちょびちょびちょびっとちょぼちょぼちょろりちょんびりちょんぼりちらり爪の垢ささやか寸毫プチ

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