田村彰英(読み)たむらあきひで

日本大百科全書(ニッポニカ) 「田村彰英」の意味・わかりやすい解説

田村彰英
たむらあきひで
(1947― )

写真家。東京に生まれる。本名田村茂。1967年(昭和42)東京綜合写真専門学校本科を卒業。1969年同校研究科を卒業するに際し、卒業作品展(富士フォトサロン、東京)で初期の代表作「家」(空地に住宅が建ってゆく光景を、約1年間にわたり断続的に定点観測風なアプローチで撮影したシリーズ)を発表する。卒業後フリーランスの写真家として活動を始め、1969年、個展「夢の光」(ニコンサロン、東京)開催。1970年から田村シゲルの名で、『カメラ毎日』『アサヒカメラ』『デザイン』『遊』『グラフィケーション』等の雑誌に作品を多数発表。1971年6月号より1973年12月号まで月刊誌『美術手帖』の中扉に写真連載。米軍基地海浜、星と航空機の光跡、消防夫やアメリカン・フットボールの選手たちなど、さまざまな事象レンズを向け、静謐(せいひつ)でしなやかな浮遊感を湛(たた)えた視覚世界を描出し、新しい写真表現の旗手として注目を浴びる。1974年MoMA(ニューヨーク近代美術館)で開催された「NEW JAPANESE PHOTOGRAPHY」展に、「家」シリーズを出品。同年、東京国立近代美術館で開催された「15人の写真家」展に参加、ついで個展「I AM A CAMERAMAN」(ガレリア・グラフィカ、東京)を開催する。1970年代中ごろから広告写真やファッション写真の分野でも活躍するようになる。

 1976年ごろより田村彰英の名で活動。1978年海外で撮影したカラー作品を集めた『田村彰英写真集 その1』を自費出版。1979年より翌年にかけ黒澤明監督の映画『影武者』(1980)撮影にスチール写真担当として参加(以後も引き続き、黒澤作品のためスチール写真の撮影を務める)。1981年、個展「DARK STAR」(ギャラリーOWL、東京)開催。1982年それまでの代表作を集めた個展「田村彰英の世界」(ツァイト・フォト・サロン、東京)開催。定点観測風のアプローチによる「家」および「道」の二つのシリーズをまとめ、1983年に写真集『田村彰英写真集』を上梓、同書により日本写真協会新人賞を受賞。東京湾岸無人の光景を撮影した「湾岸」シリーズを、1993年(平成5)のグループ展「写真1993」(茨城県立つくば美術館)、1994年の個展「田村彰英展」(川崎市市民ミュージアム)で発表。その後も個展や雑誌発表を重ねる。1972~1998年東京造形大学講師、1979年より東京綜合写真専門学校講師を務め、後進指導にあたる。2002年よりしのばずフォトスクール校長。

[大日方欣一]

『『田村彰英写真集 その1』(1978・私家版)』『『田村彰英写真集』(1983・Le Mars)』『『黒澤明』(1991・NTT出版)』『『BASE』(1992・モール)』『『ライカ解体新書――銘機の分解と撮る楽しみ』(1999・成美堂出版)』『田村彰英編『ライカレンズ完全ブック』(2001・グリーンアロー出版社)』

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