なま‐め・く【生めく・艷めく】
〘自カ五(四)〙 (「めく」は
接尾語) 不十分なように、あるいは未熟なようにふるまう。また、何でもないように、さりげなくふるまい、それがかえって、奥ゆかしく、優美に見える意。
① 人の
容姿や
挙動、あるいは心ばえが、奥ゆかしく、上品で、優美である。また、そのようにふるまう。
※
伊勢物語(10C前)一「その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり」
※
源氏(1001‐14頃)
夕顔「薄物の裳あざやかに引き結
(ゆ)ひたる腰つき、たをやかになまめきたり」
※
古今(905‐914)雑体・一〇一六「秋の野になまめき立てるをみなへしあなかしがまし花もひと時〈
遍昭〉」
※源氏(1001‐14頃)
梅枝「
高麗(こま)の紙の、〈略〉色など花やかならでなまめきたるに」
③
異性の心を誘うような様子を見せる。色っぽい様子をしている。あだっぽいふるまいをする。また、男女間の
交際にかかわることをいう。
※伊勢物語(10C前)三九「この車を女車と見て、寄り来てとかくなまめく間に」
※
浮雲(1887‐89)〈
二葉亭四迷〉一「茲
(ここ)にちと艷
(ナマメ)いた一条のお噺
(はなし)があるが」
[
語誌]「生」と「めく」を
基調とした、未熟性・清新性・さりげなさの中に
気品が感じられ優美に見えるというのが基本義。平安後期以降、官能的であることを表わす
用法が見えはじめ、中世以降は、ほぼ③の意味が
主流となる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報