琉球文化(読み)りゅうきゅうぶんか

百科事典マイペディア 「琉球文化」の意味・わかりやすい解説

琉球文化【りゅうきゅうぶんか】

沖縄の文化。沖縄では,近世まで基本的には古代貴族社会が維持され,封建的な武家社会に移行しなかったため,庶民の間には共同体社会が温存された。宗教は,アニミズムに根差して日本神道に近く,様々な季節祭がある。仏教は13世紀ごろ日本から入ったが,土着の固有信仰である祖先崇拝が根強いため,あまり浸透しなかった(おなり神聞得大君(きこえおおきみ))。15世紀ごろからは,日本,中国,朝鮮,東南アジア方面の文化の影響を受け,それらを消化吸収して,風土や歴史に適応した特色ある独自の文化を創造し,発展させた。建築では,アーチ門を備えた石積みグスク(城)が各地に構築され,貫木屋(ヌチギヤー)と呼ばれる禅宗様の本格的木造建築が造られ,屋根には赤瓦が用いられた。首里城王家菩提寺である円覚寺をはじめとする建造物の多くは,1945年の戦火で焼失したが,戦後守礼(しゅれい)門,1992年首里城の正殿,北殿,南殿が復元された。2000年琉球王国時代の九つのグスクなど(首里城跡,今帰仁(なきじん)城跡など)は世界文化遺産に登録された。 陶器は,壺屋(つぼや)焼が近世まで高い水準を維持した。中国から伝えられた漆工芸は,16世紀末には螺鈿(らでん)・沈金堆錦(ついきん)など高度な加飾法を用いた琉球漆器として発展。重要交易品として首里王府も漆器製作に力を注いだ。織物は14―15世紀の琉球大航海時代に中国・東南アジアから(かすり)や紋織り,染色技法などが伝えられ,王府が離島に課した貢布により,地域の資源を生かした特産品が生産された。絣の紋様の豊富さは他に類例をみない。王族士族礼服である紅型(びんがた)は,中国使節接待の余興芸能の衣装としても着用された。 琉球の歌舞音曲は,祭式歌舞から発達した。古歌謡である〈おもろ〉(おもろさうし)は呪術的神歌にはじまり,やがて定型抒情詩である琉歌を生み出した。14世紀ごろ中国から三線(さんしん)が伝えられると歌謡・舞踊は大いに発展,三線は士族のたしなみとされ,庶民にも普及して,今なお多くの琉球民謡が作り続けられている。音階が東南アジアからオセアニアにかけた地域と同じ5音階になっていることは注目される。沖縄独特の楽劇である組踊(くみおどり)は,日本の能・歌舞伎の影響を受けながら,時代や風土に根差した作品・舞台に作り上げられている。→琉球琉球語
→関連項目外間守善

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