熊野参詣(読み)クマノサンケイ

デジタル大辞泉 「熊野参詣」の意味・読み・例文・類語

くまの‐さんけい【熊野参詣】

熊野詣で

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精選版 日本国語大辞典 「熊野参詣」の意味・読み・例文・類語

くまの‐さんけい【熊野参詣】

平家(13C前)一二「いささか宿願によって、熊野参詣のために罷り上りて候」

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改訂新版 世界大百科事典 「熊野参詣」の意味・わかりやすい解説

熊野参詣 (くまのさんけい)

(1)平曲の曲名。平物(ひらもの)。フシ物。平維盛(これもり)は,屋島の戦陣を離脱して紀州に渡り,高野山で髪をおろした後,熊野三山参詣に赴いた。最初に参った本宮は,本地(ほんじ)が阿弥陀如来だというので,来世の往生を願い,また都に残した妻子の平穏を祈った。新宮は巌松が高くそびえ流水が清く走る清浄の地だったし,また那智は数千丈の滝に観音の霊像が拝まれて補陀落(ふだらく)浄土とも思われた(〈三重(さんじゆう)〉)。那智籠りの僧たちの中に,維盛を見知った者がいて,先年,後白河法皇の五十の賀宴のときに舞った《青海波(せいがいは)》のみごとさを仲間の僧に物語った。平家の一門が居並ぶ中で,冠に桜をかざして舞った維盛の姿は,露に色を増した花が地を照らし天に輝くような美しさで,見物の女房たちも,深山木(みやまぎ)の中の楊梅(ようばい)のようだと言い合ったという(〈中音(ちゆうおん)・初重(しよじゆう)〉)。その貴公子の今の変りようがあわれだといって,涙ながらに物語るのを聞き,他の僧たちも涙をこぼした(〈中音〉)。三重・中音・初重などが聞きどころ。
執筆者:(2)早歌(そうが)の曲名。断絶曲。1301年(正安3)以前に成る。作詞・作曲者は明空(みようくう)か。《宴曲抄上巻所収道行物。京都から紀州路を通って那智山へ至る道程を,王子社の名に,名所旧跡神社仏閣を克明に折りこんで歌う。五段よりなる組曲として唯一の曲。第五段を除く各段の末尾に,〈王子王子のなれこ舞,法施の声ぞ尊き〉の句を配するのが特徴。
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