湘南工業地域(読み)しょうなんこうぎょうちいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「湘南工業地域」の意味・わかりやすい解説

湘南工業地域
しょうなんこうぎょうちいき

神奈川県南部の湘南地区の工業地域をいう。鎌倉(かまくら)市の大船(おおふな)地区から藤沢茅ヶ崎(ちがさき)、寒川(さむかわ)、平塚などの市町に展開している。明治時代以前は、在来工業として鎌倉彫貝細工などが点在し、小規模であった。

 近代工業についてみると、湘南地区の工業が飛躍的に発展した時期が3回ある。第1期は関東大震災(1923)後の時期で、震災で被害を受けた工場が湘南に移転し、再建された昭和初期である。第2期は、第二次世界大戦中に湘南地区に軍需工場国策で建設された時期。そして第3期は第二次世界大戦後の昭和30~40年代を中心に、広大な敷地を求めて大規模工場が進出してきた時期である。これらの動きを経て、湘南地区の工業化の波は東海道沿線から内陸部に波及していった。

 湘南地区の工業は、地域的には藤沢や平塚を、業種的には輸送機械、電気を中心としている。2002年(平成14)の製造品出荷額では全県の約20%を占め、横浜に次いで県内で第2位の工業地域となっている。大船、藤沢、茅ヶ崎は、横浜内陸部の戸塚から続く工業地域で、電気器具、自動車部品、一般機械、医薬品、食料品など多種類の工場がみられる。平塚では、1905年(明治38)に設立された日本爆薬物製造会社(後の海軍火薬廠(かやくしょう))が近代工業の先駆とされ、現在ではタイヤベルト、自動車、万年筆などの業種がある。

 1980年代後半からの「バブル経済時代」に、外国からの労働者が流入してきた。2001年の統計では湘南地区に約1万2700人が居住し、その約40%が藤沢市に集中している。国別ではブラジルペルーが圧倒的に多く、藤沢市では市役所内の相談情報センターに、スペイン語とポルトガル語通訳を常駐させた。

[比佐隆三]

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