沙門(読み)しゃもん

精選版 日本国語大辞典 「沙門」の意味・読み・例文・類語

しゃもん【沙門】

〘名〙
① (śramaṇa の音訳。「勤息」と訳す。善をすすめ悪をやめる意) 出家の総称。髪をそり、悪を止め、善を勤める修行者のこと。僧侶。桑門。出家。法師。さもん。
書紀(720)持統称制前(北野本南北朝期訓)「沙門(シャモン)天の渟中原瀛の真人天皇に従ひて吉野に入りたまひて」 〔瑞応本起経‐上〕
曹洞宗の僧、あるいは検校勾当(こうとう)などのかぶる帽子のようなもの。沙門頭巾。
随筆・遠碧軒記(1675)下「検校の首にきるは帽子〈略〉又沙門と云て、洞家僧のきる帽子のやうなものもきる」

さ‐もん【沙門】

〘名〙 (「さ」は「沙」の漢音) 僧侶。しゃもん。

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デジタル大辞泉 「沙門」の意味・読み・例文・類語

しゃもん【沙門】

《〈梵〉śramaṇaの音写。勤息と訳す》僧となって仏法を修める人。桑門そうもん。さもん。
[類語]僧侶坊主坊さん御坊お寺様僧家法師出家比丘僧徒桑門和尚住職住持方丈入道雲水旅僧

さもん【沙門】

しゃもん(沙門)

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普及版 字通 「沙門」の読み・字形・画数・意味

【沙門】しやもん

梵語ramaaの音訳。浄志・息心などと訳する。僧をいう。〔晋書、何充伝〕性、釋典を好む。佛寺を崇修し、沙門に供給すること百を以て數ふ。費を糜(つひ)やすことなるも、吝(を)しまざるなり。親友乏に至るも、施する無し。

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改訂新版 世界大百科事典 「沙門」の意味・わかりやすい解説

沙門 (しゃもん)

僧侶のこと。サンスクリットシュラマナśramaṇaの音訳で,古代インドにおいて家庭を捨てて出家し,衣を着て旅をしながら修行する行者をさした。日本では《日本霊異記》に薬師寺沙門景戒(けいかい)とか,元興(がんごう)寺沙門慈応とかその用例みえ,また上表文などに前入唐沙門最澄とか,沙門円珍と自署する例もある。これらのことから,僧侶がその所属寺院や社会的身分を記す場合に,〈僧〉と同義語として使用されたことがわかる。中世においても,日蓮が沙門日蓮と自称し,また《元亨釈書(げんこうしやくしよ)》に師錬が済北沙門と称し,《三国仏法伝通縁起》に東大寺沙門凝然(ぎようねん)とみえるなど,禅宗や南都系の僧に沙門を冠する例が多くみえる。このように,僧と沙門の区別は明確でなく,概念も一定していたとはいえない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沙門」の意味・わかりやすい解説

沙門
しゃもん

出家者の総称。サンスクリット語のシュラマナśramaaに相当する音訳語で、勤息(ごんそく)、浄志(じょうし)などと漢訳する。剃髪(ていはつ)して善に努め、悪をなさず、身心を制御して悟りを得るために努力する人をいう。彼らは古代インドにおいて、正統的伝統的な思想家であるバラモンに対して、古来の階級制度やベーダ聖典の権威を否認した革新的な思想家であり、民衆のことばである俗語を使って教説した。仏教の比丘(びく)たちも沙門の一部である。

[辛嶋静志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沙門」の意味・わかりやすい解説

沙門
しゃもん

サンスクリット語 śramaṇaあるいは samaṇaの音写。「つとめる人」の意。ゴータマ・ブッダとほぼ同時代に出現したインドの新たな思想家たちをいう。本来は仏教に限らず用いられたが,仏教でも出家して修行を実践する人々を沙門と称する。なおこのサンスクリット語はモンゴル人に受入れられて,呪術者と同一の語となったという説がある。

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百科事典マイペディア 「沙門」の意味・わかりやすい解説

沙門【しゃもん】

サンスクリットのシュラマナの音写。勤息(ごんそく),貧道などと訳す。仏教で出家者の総称。剃髪(ていはつ)し,悪を止め善を修して,悟りを求める修行者。古くインドでは仏教以外でも用いられたが,仏教では後に比丘(びく)と同義に用いる。

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世界大百科事典(旧版)内の沙門の言及

【僧】より

…なお尼は比丘尼の語尾だけをとった略称である。比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。…

※「沙門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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