精選版 日本国語大辞典 「比丘」の意味・読み・例文・類語
びく【比丘】
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サンスクリットのbhikṣu,パーリ語のbhikkuの音訳。〈苾蒭〉とも書く。乞士(こつし),除士,破煩悩と訳される。仏教に帰依して出家入道した男子で,女子は比丘尼である。沙門(しやもん),桑門というのもおなじで,沙弥(しやみ),沙弥尼が20歳に達して具足戒を受ければ比丘,比丘尼となる。比丘となれば乞食(こつじき)して仏道修行するので,乞食する(bhikṣ)者の意で比丘と呼ばれるのである。その生活は,在家を出て髪をそり,三衣一鉢のほかいっさいの所有を捨て,食は托鉢により,衣は捨てられた布を拾った糞掃衣(ふんぞうえ)を着る。また樹下石上を住居とした。初期の仏教教団(僧伽)は,このような比丘と比丘尼のほかに在家信者の優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)の四衆から成り立っていた。しかし仏教が北方の寒冷地帯に広まり,帝王の厚い保護を受けるようになると,比丘の生活も変化した。大伽藍に住み,美衣美食をむさぼるようになって,ただ戒律僧だけが比丘の伝統をまもった。また日本では,山岳修行者が比丘以上の禁欲生活を送るようになった。
→僧
執筆者:五来 重
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仏教における男性の出家修行者。女性は比丘尼(びくに)。仏教僧。パーリ語のビックbhikkhuの音写。サンスクリット語ではビクシュbhikuという。もとは、「食を乞う者」の意。インドで紀元前約6世紀ごろから、出家して托鉢(たくはつ)する修行者が現れ、釈迦(しゃか)もその一人であった。仏教教団の成立とともに、比丘はそのもっとも重要な成員として、信徒の指導と教団の維持を果たす。出家して綿密な戒(具足(ぐそく)戒とよばれる)を受け、それを保ち続け、仏道修行に専念して、無一物であるために、午前のみの食事などは在家信者の布施(ふせ)によったところから、この名がある。
[三枝充悳]
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…【山崎 元一】 スリランカ系の上座部仏教が広まった東南アジアでは,もっぱら出家者教団のみをサンガと呼び,在家者はこれに含めないのが普通である。パーリ律227戒を守るビク(比丘)と,20歳未満で10戒のみを守るサーマネーラ(沙弥)をその成員とする。サンガは,ただ1人の首長(サンガラージャ)によって統轄される全国規模の統一組織である場合(タイ),複数の自立的出家教団(ニカーヤ)が並列的に存在し,それらを統一する上部機構としてのサンガ組織を欠く場合(現在のスリランカ,ミャンマーなど)など,その存在形態は一様でない。…
…仏門に入って僧尼となることである。仏教徒の集団を構成する七衆のうち在家の優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)を除く,比丘(びく),比丘尼,式叉摩那(しきしやまな),沙弥(しやみ),沙弥尼の五衆は出家のなかに入る。鬚髪(しゆはつ)を剃り,墨染など壊色(えしき)に染めた衣をまとう状態になるので剃髪染衣(ていはつぜんえ)といい,とくに王侯貴族の出家は落飾(らくしよく)という。…
…サンガは元来,集団,共同体の意味で,修行者の集り,教団を指すが,中国では転じて個々の修行者を僧とよぶにいたった(その複数形をあらわす僧侶もまた,日本では個人を指す語に転化した)。
[インド]
教団の構成員は出家修行者たる比丘(びく),比丘尼(びくに)と在家信者たる優婆塞(うばそく),優婆夷(うばい)の4種で,合わせて四衆とよぶ。また,修行者のうち未成年者を沙弥(しやみ),沙弥尼といい,女性で入団1年未満のものを式叉摩那(しきしやまな)とよび,これらを別出して七衆ともいう。…
※「比丘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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