水産研究・教育機構(読み)すいさんけんきゅうきょういくきこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水産研究・教育機構」の意味・わかりやすい解説

水産研究・教育機構
すいさんけんきゅうきょういくきこう

水産に関する研究開発と、サケ・マス類の孵化(ふか)・放流といった業務、ならびに水産分野の人材育成などを行う農林水産省所管の国立研究開発法人(独立行政法人)。英語名はJapan Fisheries Research and Education Agency、略称はFRA。「国立研究開発法人水産研究・教育機構法」(平成11年法律第199号)を根拠法とする。2016年(平成28)、国立研究開発法人水産総合研究センターと独立行政法人水産大学校を統合して設立された。本部は横浜市西区みなとみらい。

 水産総合研究センターは、中央省庁改革により、水産研究所(1929年創立)、養殖研究所、水産工学研究所(ともに1979年創立)など九つの水産庁の研究所を統合して、2001年4月、独立行政法人として設立。その後2003年に海洋水産資源開発センター(1971年創立)、社団法人日本栽培漁業協会(1963年創立)の廃止を受けてその業務を継承。2006年には独立行政法人さけ・ます資源管理センターを統合してサケ・マス類の孵化・放流業務を継承した。2015年、国立研究開発法人に移行

 水産大学校は1941年(昭和16)に開校した朝鮮総督府釜山(プサン)高等水産学校を母体とする。第二次世界大戦後、解体された学校の学生を収容するため、1946年(昭和21)水産講習所下関(しものせき)分所が開所。数度の改称を経て、1963年に水産大学校となり、2001年に独立行政法人化された。

 この二つの組織が統合されて発足した水産研究・教育機構は、(1)水産資源の持続的な利用のための研究開発、(2)水産業の健全な発展と安全な水産物の安定供給のための研究開発、(3)海洋・生態系モニタリングと次世代水産業のための基盤研究、(4)水産業界を担う人材育成、の四つの重点的目標を設定。マグロ類やウナギなどの資源調査や養殖・飼料の研究、水産分野におけるゲノム解析、国内外の国際漁業資源の現況調査、沿岸域の変化の把握と保全・修復、有害生物等の影響解明と被害低減の研究、サケ・マス類の孵化・放流業務、大形クラゲの出現予測、生産現場の安全性確保や、生産性・収益性向上のための研究開発などのほか、水産大学校を運営して水産に関連する分野を担う人材の育成を目ざしている。

 これらの業務を遂行するために、北海道区水産研究所(札幌市豊平(とよひら)区)、日本海区水産研究所(新潟市中央区)、増養殖研究所(三重県南伊勢(いせ)町)など、10の研究施設を有する。水産大学校では4年制の学科として水産流通経営学科、海洋生産管理学科、海洋機械工学科、食品科学科、生物生産学科の5学科が置かれ、さらに上級に1年制の専攻科、2年制の水産学研究科が設置されている。山口県下関市永田本町の本部キャンパスのほかに小野(おの)臨湖実験実習場(山口県宇部(うべ)市)があり、練習船を所有する。

[編集部 2017年8月21日]

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