普及版 字通 「民(漢字)」の読み・字形・画数・意味
民
常用漢字 5画
[字訓] たみ・ひと
[説文解字]
[金文]
[字形] 象形
一眼を刺して、その視力を害する形。〔説文〕十二下に古文一字を録し、「衆なり。古の象に從ふ」とするが、古文の形はその意象を知りがたい。〔段注〕に「古の民は、蓋(けだ)し生(はんぶ)の形に象る」と衆草の茂るさまとするが、金文の字形から変化したものであるらしく、金文は眼睛を刺割する象とみられる。郭沫若は(萌)・(盲)・民の声が近く、その義が通ずることから、民を奴隷であると解したが、臣もまた大きな目の形、その目を刺す形が民で、合わせて臣民という。ともに本来は神の徒隷として、神にささげられたものをいう。民はのち新しく服属した民をいう語となり、周初の金文〔大盂鼎(だいうてい)〕に「四方を匍()(ふいう)し、厥(そ)の民を正(しゆんせい)す」、また後期の〔大克鼎〕に「民に惠す」、斉器の〔(そはく)〕に「民人鄙(とひ)」、〔子孟姜壺(かんしもうきようこ)〕に「人民邑」の語がある。民とは支配関係を以ていう語である。〔詩、大雅、仮楽〕に「民に宜しく人に宜し」とあり、人は卜辞では他種族のものをいう語で、族名を冠して某人という例であった。
[訓義]
1. たみ、臣民。古くは神の徒隷として、神につかえるものであった。
2. ひと、新附の民。政治支配の対象たるものをいう。
3. 冥と通じ、くらい、おろか。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕民 タミ/人民 ヒトクサ。或いは云ふ、オホムタカラ 〔立〕民 ヒトクサ・タミ・タカラ・オホヤケ
[部首]
〔説文〕〔玉〕に、氓一字を属する。〔玉〕民字条に〔説文〕を引いて「衆氓(しゆうばう)なり」に作る。民・氓は、もとほとんど同義の字であった。
[声系]
〔説文〕に民声として・・罠・(蚊)など六字を収める。三下は「彊(つと)むるなり」と訓し、民に攴(ぼく)を加えてたち働かせる意。愍は哀痛の意をもつ字である。
[語系]
民mienは、氓・()meangと声義が近い。氓・(ぼう)が(亡)miuangの声に従うのは、かれらが、その本貫を離れた、流亡の民であることを意味するものであろう。
[熟語]
民意▶・民彝▶・民夷▶・民隠▶・民英▶・民営▶・民役▶・民怨▶・民屋▶・民家▶・民歌▶・民害▶・民間▶・民艱▶・民気▶・民紀▶・民器▶・民居▶・民業▶・民極▶・民苦▶・民献▶・民権▶・民言▶・民戸▶・民語▶・民行▶・民荒▶・民綱▶・民膏▶・民豪▶・民財▶・民産▶・民志▶・民脂▶・民資▶・民事▶・民時▶・民疾▶・民舎▶・民主▶・民衆▶・民庶▶・民状▶・民常▶・民情▶・民食▶・民心▶・民臣▶・民神▶・民親▶・民人▶・民数▶・民生▶・民声▶・民性▶・民政▶・民籍▶・民俗▶・民賊▶・民卒▶・民村▶・民智▶・民知▶・民治▶・民聴▶・民丁▶・民天▶・民田▶・民徒▶・民蠹▶・民徳▶・民▶・民表▶・民賦▶・民風▶・民物▶・民兵▶・民病▶・民変▶・民氓▶・民萌▶・民牧▶・民本▶・民命▶・民有▶・民誉▶・民用▶・民謡▶・民利▶・民律▶・民虜▶・民糧▶・民力▶・民累▶・民▶・民霊▶・民黎▶・民隷▶・民和▶
[下接語]
愛民・安民・移民・遺民・佚民・逸民・下民・寡民・猾民・官民・姦民・鰥民・頑民・飢民・義民・畜民・鳩民・窮民・居民・馭民・郷民・愚民・公民・皇民・荒民・国民・済民・細民・散民・士民・四民・市民・衆民・讐民・住民・恤民・俊民・庶民・小民・烝民・常民・擾民・植民・臣民・新民・親民・賑民・人民・生民・斉民・先民・賤民・蒼民・賊民・治民・致民・兆民・天民・土民・難民・農民・万民・蛮民・疲民・貧民・浮民・富民・部民・平民・辺民・編民・保民・牧民・野民・友民・遊民・庸民・乱民・吏民・流民・良民・黎民・隷民
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報