正に・当に・応に・方に・将に（読み）まさに

精選版 日本国語大辞典

まさ‐に【正に・当に・応に・方に・将に】

〘副〙 (「まさ（正）①」から)

① 一つの事柄や事態が、別の事柄や事態にたしかに合致するという判断を表わす。適切に。ちょうど。

※聖語蔵本成実論天長五年点（828）一八「答曰一相とは応に（当也）是れ禅定なり」

② ある事態が、誇張やいつわりを含まない正確なものとして成り立つことを強調する気持を表わす。正確に。間違いなく。

※仏足石歌（753頃）「丈夫の進み先立ち踏める足跡(あと)を見つつ偲はむ直に会ふまでに麻佐爾(マサニ)会ふまでに」

※義血侠血（1894）〈泉鏡花〉六「時正(マサ)に午後一時」

③ (推量・命令などの表現を伴って) ある事態が確実に成立するようにという、強い希望や命令などを表わす。必ず。きっと。

※大唐西域記巻十二平安中期点（950頃）「蚕(かひこ)蛾(ひひる)飛び尽きて乃ち爾(マサニ)治ることを得む」

④ (「将無（非）」などの漢文訓読で、否定の反語表現「…なからむや」「…にあらずや」などを伴って) 断定をためらいながらも一つの判断を表わす。…ではないだろうか（…だろう）。

※西大寺本金光明最勝王経平安初期点（830頃）一〇「此の林の中に将に猛き獣ありて我を損害すること無けむや」

⑤ (反語表現を伴って) ある事態が絶対に成立するはずはないという判断を強調して表わす。どうして…しようか。どうして…できようか。

※竹取（９Ｃ末‐１０Ｃ初）「わが丈たち並ぶまで養ひ奉りたるわが子を、何人か迎へきこえん、まさに許さんや」

⑥ (時間の推移に視点をおいて) 行為がこれから始まる、または、状態がいま継続されているという時点を強調して表わす。ちょうどいま。いま現に。

※書紀（720）推古三一年四月（岩崎本訓）「則ち悪逆せる僧及び諸僧並に尼を将(マサニ)罪せんとす」

出典　精選版 日本国語大辞典