檜皮葺き(読み)ヒワダブキ

デジタル大辞泉 「檜皮葺き」の意味・読み・例文・類語

ひわだ‐ぶき〔ひはだ‐〕【××葺き】

ひのき樹皮を密に重ねて屋根を葺くこと。また、その屋根。社寺宮殿などに用いられる。ひわたぶき。
[類語]瓦葺き草葺き茅葺きわら葺き笹葺き板葺きこけら葺きとんとん葺き

ひわた‐ぶき〔ひはた‐〕【××葺き】

ひわだぶき

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「檜皮葺き」の意味・わかりやすい解説

檜皮葺き
ひわだぶき

檜(ひのき)の樹皮、すなわち檜皮を葺き材料とした屋根葺き方法をいう。垂木(たるき)の上にこれと直交する方向に一定間隔で桟を打ち、その桟に釘(くぎ)や縄を用いて止めていくが、檜皮は密に重ねられ、その総厚が30センチメートル以上に及ぶことも珍しくない。棟は普通の瓦(かわら)葺きと同じく棟瓦(むながわら)、のし瓦、鬼板を使って収めることが多い。優美な外観となるが、同じ植物性材料とはいいながら、茅(かや)や藁(わら)に比して高価につくので、宮殿、神社、仏寺などに広く用いられても民家ではめったにみられない。檜皮葺きをもつ著名な建物としては京都御所の紫宸殿(ししんでん)、清涼殿などの主要殿舎があるが、同じ御所内でも付属屋にはむしろ瓦葺きが多用されている。これは、貴人の住居には中国風の瓦を避け、植物性材料を用いる古代以来の風習によるものと思われる。なお仏寺では吉野山蔵王(ざおう)堂が檜皮屋根をもつ最大の建物である。

 檜皮葺き屋根の耐用年数は15年程度とされるが、檜皮の採取や葺きあげには特殊な技術を要し、かつ森林資源保護の見地からも今後その供給が危ぶまれ、巨大な遺構の修理に支障をきたすことが懸念されている。ただし可燃性材料であるので、市街地における一般建築への適用は法規で禁止されている。

[山田幸一]

 なお檜皮葺きは、2020年(令和2)「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」17件中の1件(檜皮葺・杮葺(こけらぶき))として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

[編集部 2022年1月21日]

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世界大百科事典(旧版)内の檜皮葺きの言及

【社寺建築構造】より

…材料としては,瓦,檜皮(ひわだ),柿(こけら),茅(かや),銅板が普通であるが,古くは寺院は瓦葺き,神社は茅葺きが本来の姿で,今日でも伊勢神宮は茅葺きの伝統を伝えている。檜皮葺きはヒノキの樹皮を,柿葺きは薄く割った木片を葺いたもので,柿葺きは厚さ2mmくらいの薄板のものをいい,4~7mmのものを木賊(とくさ)葺き,9~30mmの厚いものを栩(とち)葺きなどという。神社建築では,普通,檜皮葺きや柿葺きを用いる。…

【屋根】より

…また屋根の棟には実用と装飾を兼ねて,棟の両端に鴟尾(しび),鯱(しやち),鬼面などを,棟の上に千木(ちぎ),堅魚木(かつおぎ)(勝男木),鳥おどりや宝珠などを置く。
[葺き材]
 日本建築の屋根を葺き材で分けると,本瓦葺き,桟瓦葺き,檜皮葺き(ひわだぶき),杉皮葺き,茅葺き,こけら(柿)・栃・長板などの板葺き,銅瓦葺き,銅板葺き,鉄板葺き,スレート葺きなどとなる。 本瓦葺き(図3-a)は,飛鳥時代に中国,朝鮮から伝来した寺院建築によってもたらされたもので,以来,宮殿,城郭建築,民家などに広く用いられてきた。…

※「檜皮葺き」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」