精選版 日本国語大辞典 「様・状・方」の意味・読み・例文・類語
さ‐ま【様・状・方】
[1] 〘名〙
① 人の姿や形。また、顔つきや身なり。
※竹取(9C末‐10C初)「いといたく苦しがりたるさましてゐたまへり」
※宇治拾遺(1221頃)九「御さまなども心うく侍れば」
② 物事やあたりの、ありさま。様子。状態。
④ 品格。がら。身のほど。
※竹取(9C末‐10C初)「此度はいかでかいなび申さむ。人さまもよき人におはす」
※宇治拾遺(1221頃)一二「かかる事な云そ。さまにも似ず、いまいまし」
⑤ 方法。手段。
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「其の祷(いのる)可(べ)き方(サマ)を計(はからく)」
⑥ 理由。いきさつ。事情。
※源氏(1001‐14頃)空蝉「たびたびの御方違へにことつけ給ひしさまを、いとかういひなし給ふ」
※評判記・吉原用文章(1661‐73)一四「かねのおと、はやかれかしと、ねがひ申たる事に候、とかくさまゆへにて候」
② 他称。話し手、相手両者から離れた恋する人をさし示す語(遠称)。あのかた。ぬし。
※浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)上「手やきのかなづち煎餠、様にしんぜて下さりませ」
[3] 〘接尾〙
[一] (後世は「ざま」とも)
① 体言に付いて、その方向、方面の意を添える。向き。かた。
※枕(10C終)一九七「雨のあしよこさまにさはがしう吹きたるに」
※徒然草(1331頃)二三八「ある御所さまのふるき女房の」
② 時を表わす体言に付いて、その時分、その時になろうとする頃の意を添える。
※康福記‐嘉吉二年(1442)七月一〇日「夕方様御隙候者、以レ面可レ申也」
③ 動詞に付いて、そうする時、また、ちょうどその時の意を添える。
※古今(905‐914)離別・三八九「したはれてきにし心の身にしあればかへるさまには道もしられず〈藤原兼茂〉」
※保元(1220頃か)中「力なくなをり様(サマ)にはなちたり」
④ 動詞に付いて、そういう動作のしかたを表わす。方(かた)。様(よう)。ぶり。
※竹取(9C末‐10C初)「八島の鼎の上に、のけさまに落ち給へり」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「カノ ヒトノ イソポニ atarizamaga(アタリザマガ) ワルウテ」
[二] ((一)から転じたもの)
※義経記(室町中か)八「若君さま御館の御子と産れさせ給ふも」
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)上「久しぶりで御無事なお顔お嬉しさまや」
[語誌]((三)(二)①について) 「殿」の表わす敬意が低下し、それに代わって「様」が使われるようになった。室町期においては「様」が最も高い敬意を表わし、「公」に続く三番目に「殿」が位置していた。江戸期には「様」の使用が増加し、「様」から転じた「さん」も江戸後期には多用されるようになる。なお「殿」から転じた「どん」は、奉公人に対してだけ用いる呼称という制約もあり、勢力が拡大しないまま衰退したが、方言として敬意を示すのに使う地域もある。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報