根室(市)(読み)ねむろ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「根室(市)」の意味・わかりやすい解説

根室(市)
ねむろ

北海道東端にある水産都市。根室振興局所在地。太平洋に突き出た根室半島の全域を占める。市名はアイヌ語「ニムオロ」(樹木の繁茂する所)に由来。1957年(昭和32)根室町と和田村が合併して市制施行。1959年歯舞(はぼまい)村を編入。JR根室本線、国道44号が通じ、西部の厚床(あっとこ)で243号が分岐する。JR標津線(しべつせん)は1989年(平成1)廃止。中心市街地は半島中央部の北岸で根室湾に面し、漁港がある。

[進藤賢一]

歴史

開発は1754年(宝暦4)に、松前藩珸瑶瑁水道(ごようまいすいどう)の航路を開き、根室港を交易地としたことに始まる。1869年(明治2)開拓使庁根室出張所が設置され、1882年には根室県が置かれ、また1886年和田には屯田兵440戸が入植した。1897年の根室支庁(現、根室振興局)開設で、根室地方だけでなく千島列島一円の行政の中心地となった。産業面では、明治期以降漁業と水産加工業が行われ、また千島、知床(しれとこ)方面への航路も開設されて物資輸送の基地、海産物集散地として繁栄した。第二次世界大戦末期には戦災で市街地の80%が焼失、さらに千島、歯舞、色丹(しこたん)の島々を失い、引揚者の多くを抱えることになった。現在、北方領土返還運動の拠点となっているのはこのためである。

[進藤賢一]

産業

産業は水産業が中心で、根室港と花咲港(はなさきこう)を基地として沖合・遠洋漁業のサケ、マス、サンマタラ、カニ漁など、沿岸漁民のコンブ漁やサケ漁が行われる。2013年(平成25)の漁業経営体は787戸、水揚高は約250億円に達し、缶詰、水煮、干物、塩蔵などの水産加工業が事業所の中心をなしている。ウニ種苗生産センター(1991年完成)、水産研究所(1996年完成)などを設置して水産資源の増大と有効利用を図っている。半島の段丘性丘陵面から根釧(こんせん)台地にかけては、「新酪農村」など、日本を代表する大型で近代的な酪農地帯が出現した。なお、乳牛頭数約1万1000頭、農用地は約9600ヘクタールに及ぶ(2015)。

[進藤賢一]

観光資源

東端の納沙布(のさっぷ)岬からは北方領土の歯舞群島を眼前に望むことができる。花咲岬根室車石(くるまいし)、落石岬(おちいしみさき)のサカイツツジ自生地はともに国指定天然記念物。西浜地区の西月ヶ岡遺跡は擦文時代の集落跡で国指定史跡。風蓮湖(ふうれんこ)はオオハクチョウ飛来地で、東の温根沼(おんねとう)とともに野付(のつけ)風蓮道立自然公園域に含まれる。風蓮湖・春国岱(しゅんくにたい)はラムサール条約登録湿地。面積506.25平方キロメートル(歯舞群島を含む。風蓮湖を含まず)、人口2万4636(2020)。

[進藤賢一]

『『根室市史』全3巻(1968・根室市)』『高原一隆・増田洋編『地域問題の経済分析――転機にたつ北洋漁業基地・根室市の場合』(1986・大明堂)』


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