岩石学辞典 「枕状熔岩」の解説
枕状熔岩
熔岩が小楕円体あるいは小球の集合で枕状構造を作る作用は,玄武岩質熔岩が流動する際に小団塊に分れ,この小団塊が密に集合して固結する時に生じる.この名称は枕を乱雑に積み重ねた状態に類似している構造をもっている熔岩として命名された.枕状熔岩は地向斜堆積物に伴われることが多く,一般に水底の噴出か水中に流入したことを表わしている.熔岩が舌のように出て膨れ枕程度の大きさになると,その前に細粒またはガラス質の殻が発達してそれ以上の成長を阻害するために枕が形成される.この時期では枕はまだ塑性を保っており,初期の枕によって枕の下面が凹むが,上面は後からの枕で覆われる以前に硬くなる.この形状から古い枕の上下を判別できる[Dewey & Flett : 1911, Coleman : 1 977].枕状熔岩の個々の枕が,断面ではほぼ円形に近く,中心から放射状の割れ目が入っている場合に,俵を横から見たように見えるので俵状熔岩ともいう.枕状熔岩は1854年にナウマンによってサクソニイのものが報告されて以来,多くの人によって論ぜられていた[Naumann : 1854].様々な説があったが,一般には海底に熔岩が噴出し,流動性に富む熔岩流が急冷してちぎれ,個々に楕円体状となって固結したものと考えられていた[鈴木 : 1954].その後実際に熔岩が海中に流れ込み急冷した様子が海中で撮影され,海中で急冷して枕状の構造が形成されることが確認された[Moore : 1975].
日本では徳重が佐渡において枕状熔岩の存在を最初に記載した[徳重 : 1934, 1935].その後北海道根室半島の車石の研究があり[八木 : 1948, Yagi : 1950],北海道各地のものの報告が行なわれた[鈴木 : 1951, 1954].現在では日本各地で産出が知られている.