押立(読み)おしたてる

精選版 日本国語大辞典 「押立」の意味・読み・例文・類語

おし‐た・てる【押立】

〘他タ下一〙 おした・つ 〘他タ下二〙
① 押し起こして立てる。押し付けて立てる。
今昔(1120頃か)二三「其より相撲屋様に、〈略〉有る者を押立て将行て」
太平記(14C後)二二「四十五尋(ひろ)ありける檣(ほばしら)を軽々と推(ヲシ)立て」
② 戸や屏風などを押しやってとざす。しめる。
源氏(1001‐14頃)花宴「やをら抱(いだき)おろして戸はをしたてつ」
③ (「おし」は接頭語) 先に立てる。前を行かせる。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「かくて大将殿は〈略〉まかで給ふままに、御つかさの人待ち受け奉りて、をしたててあそびて殿におはす」
④ しいて行なわせる。むりじいする。強要する。
落窪(10C後)二「さやうなる人のおしたててのたまはば」
⑤ 力を加えて前の方に進める。押し出す。
人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)六「舟をおしたて、稍柴浦に漕ぎ寄するにぞ」

おし‐た・つ【押立】

[1] 〘自タ四〙 (「おし」は接頭語)
① 「立つ」を強めていう。両足を踏んばって立つ。立ちはだかる。
※梵舜本沙石集(1283)二「不動、火炎の前にをしたち、〈略〉蘇生(そせい)しけり」
② 自分勝手にふるまう。我(が)を通す。無理押しする。強引に行なう。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「かの君のおしたちあしきにもあらず」
※落窪(10C後)四「時の人の御族(ぞう)とておしたちてあらんかし」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒おしたてる(押立)
[補注]「色葉字類抄」「伊呂波字類抄」「運歩色葉集」などでは、「」の字に「ヲシタツ」「ヲシタツル」の訓を付ける。「辷」の字と同様の国字であろう。

おし‐たて【押立】

〘名〙
人前に出た時の、その人の体の様子、姿。おしだし。容姿
朝倉孝景条々(1471‐81)朝倉英林壁書八条「用義押立よきは、供使之用に立候
② 格別であること。特別。
毛利家文書‐(年月日未詳)(16C中)毛利元就自筆書状「元就数年てうれん仕候間、おし立ふかき事は存候ましく候」

おっ‐た・つ【押立】

[1] 〘自タ四〙 (「おっ」は接頭語) 立つ。また、建つ。
※雑俳・柳多留‐一四六(1838‐40)「鶺鴒を見ておっ立たふた柱」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒おったてる(押立)

おさえ‐だち おさへ‥【押立】

〘名〙 赤ん坊などが物を押えて立つこと。また、その年ごろ。つかまり立ち。
※とりかへばや(12C後)中「やうやうをさへたちほどなるが、うつくしきもめのみとどまりて」

おっ‐た・てる【押立】

〘他タ下一〙 おった・つ 〘他タ下二〙 (「おっ」は接頭語) 勢いよく立てる。また、建てる。
浄瑠璃・本朝三国志(1719)三「だい笠たて笠おったてろ」

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