惜・愛(読み)おしい

精選版 日本国語大辞典 「惜・愛」の意味・読み・例文・類語

おし・い をしい【惜・愛】

〘形口〙 をし 〘形シク
① (愛) いつも自分のものにしておきたいほどかわいい。いとしい。ほしい。
書紀(720)欽明二三年七月(寛文版訓)「汝命(いのち)と婦と孰(いづれ)か尤(はなはた)(ヲシキ)
事物を愛するあまりに手放しにくい。心をひかれて手ばなしにくい。思いきって捨て難く思う。
万葉(8C後)二〇・四五〇五「磯の浦に常よひ来住む鴛鴦(おしどり)の乎之伎(ヲシキ)あが身は君がまにまに」
※浄瑠璃・三社託宣由来(1678)「たがひに命をおししとせず」
③ 思うようにならなかったり、物事のねうちが生かされなかったりするのを残念に思う。心残りである。
※万葉(8C後)一四・三五五八「逢はずして行かば乎思家(ヲシケ)む麻久良我(まくらが)の許賀(こが)漕ぐ船に君も逢はぬかも」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「お初を呼に遣ればよかったのう。惜(ヲシ)いことをした」
[語誌](1)自然の推移や時間の経過により、変化したり消えたりしていく対象への、愛着の思いを表わす。
(2)類義語「あたらし(惜)」は、対象を立派ですばらしいものと評価する客観性を持ち、その評価にふさわしい扱いがされないことに不満をいだき訴え嘆く気持がこめられる。
おし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
おし‐げ
〘形動〙
おし‐さ
〘名〙

おし‐・む をし‥【惜・愛】

〘他マ五(四)〙
① 物惜しみをする。出し惜しみをする。
※書紀(720)安閑元年七月(寛文版訓)「『今汝、膏腴(こ)えたる雌雉(きじ)田を奉る宜し』とのたまふ。味張、忽然に悋惜(ヲシム)で、勅使を欺誑(あざむ)きて曰はく」
② 捨てがたく思う。残り惜しく思う。愛惜する。
※万葉(8C後)二〇・四四〇八「朝戸出の かなしき吾が子 あらたまの 年の緒長く 相見ずは 恋しくあるべし 今日だにも 言問ひせむと 乎之美(ヲシミ)つつ 悲しび坐せば」
③ いとしく思う。いつくしむ。
※書紀(720)允恭四二年一一月(図書寮本訓)「爰に新羅の人、恒に京城(みやこ)の傍(ほとり)の耳成(みみなし)山を、畝傍(うねび)山を愛(ヲシム)(別訓 めづ)」
※続後撰(1251)春中・八六「おしむべきにはのさくらはさかりにて心ぞ花にまづうつりぬる〈壬生忠岑〉」
④ 大切なものに思う。大事にする。尊重する。「寸暇を惜しむ」
※観智院本三宝絵(984)中「靄禅師のよを悲み身を恨み命をすて、遠法師の道ををしみしかば」

をし【惜・愛】

〘形シク〙 ⇒おしい(惜)

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