建築組物(読み)けんちくくみもの

改訂新版 世界大百科事典 「建築組物」の意味・わかりやすい解説

建築組物 (けんちくくみもの)

中国系建築の柱上にある斗(ます)と肘木(ひじき)とからなり,軒の重荷をささえる部分をいう。斗栱(ときよう),斗組(ますぐみ)などともいう。斗と肘木との組合せ方によっていろいろの名称がある。柱上に肘木をおくだけのものを舟肘木,斗一つの上に肘木をおくものを大斗(だいと)肘木,その上に斗を三つおくものを三斗(みつど)組という。壁から直角前方へ出たものを手先(てさき)の組物といい,三斗組で前方に肘木を出し,先に斗をのせたものを出三斗(でみつど),その先の斗の上に1組の斗と肘木をのせたものを出組(でぐみ)という。出組よりもう1手出れば二手先(ふたてさき),以下,三手先,四手先となる。三手先までが普通で,四手先は多宝塔上層にもちいられるだけであり,天竺様(てんじくよう)では六手先まである。肘木は壁から直角に出るのが普通であるが,中国の遼・金時代以後のものでは直角と45度方向とに出し,左右の組物が網のように連続してつくられるものがある。日本ではこの例は一つ(長崎崇福寺第一峰門)しかない。

 斗は位置と形に名がつけられる。柱上にあるものを大斗,肘木上のものを巻斗まきと),隅(すみ)肘木上にあって下がねじれた曲面となるものを鬼斗(おにと)という。肘木のうち,桁を直接うけるものを実(さね)肘木,組物相互間をつなぐ長いものを通(とおし)肘木,十文字に組んだものを枠(わく)肘木,手先の斗上にのるものを秤(はかり)肘木という。また柱にさしこんだ肘木を挿(さし)肘木という。組物は三手先以上になると間に尾棰(おだるき)がはいる。肘木下端は円あるいは簡単な曲線であるが,ここに複雑な曲線を用いたものを雲肘木(飛鳥時代),花肘木(中世以後)と呼ぶ。実肘木は繰形(くりかた)がついているのが普通である。組物は和様建築では柱上だけにおき,その間には間斗束(けんとづか)か蟇股(かえるまた)をもちいるが,唐様ではここにも組物をおく。このような組物の配置のしかたを詰組(つめぐみ)という。折衷様ではここに,肘木上に斗二つをのせた二つ斗や,複雑な絵様繰形のついた花肘木をもちいることがある。
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