幼生生殖(読み)ヨウセイセイショク(英語表記)pedogenesis

デジタル大辞泉 「幼生生殖」の意味・読み・例文・類語

ようせい‐せいしょく〔エウセイ‐〕【幼生生殖】

幼生段階体内卵細胞発生を始める現象単為生殖一種吸虫タマバエなどでみられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「幼生生殖」の意味・読み・例文・類語

ようせい‐せいしょく エウセイ‥【幼生生殖】

〘名〙 成体になる前の段階で、幼虫の体内の卵細胞が発生を始める現象。単為生殖の一種。寄生虫である肝蛭(かんてつ)や、タマバエでその例が見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「幼生生殖」の意味・わかりやすい解説

幼生生殖 (ようせいせいしょく)
pedogenesis

幼生でありながら体内で卵が成熟し,単為生殖を行って新個体を生じること。寄生性のタマバエやカンテツの幼生にその例が知られている。扁形動物吸虫類に属するカンテツのミラキディウム幼生は,水中を泳いでいる間に中間宿主であるモノアラガイの体内に入り,スポロシスト幼生となる。スポロシスト体内の生殖細胞は単為発生してレディア幼生を,レディア幼生の体内でもまた単為発生をして多くのセルカリア幼生を生じる。カンテツの終結宿主草食動物で,十分な栄養のもとで成体に成長し両性生殖を行う。糞(ふん)とともに排出された受精卵は水中でミラキディウム幼生になるが,いつ再び終結宿主に戻れるかわからない。そこで,かろうじて栄養状態にめぐまれた中間宿主内で,幼生生殖により爆発的に個体数を増やして種の絶滅を防いでいると考えられている。なおネオテニーは,個体発生がある段階で止まり成熟するもので,幼生生殖とは異なる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「幼生生殖」の意味・わかりやすい解説

幼生生殖
ようせいせいしょく

雌の体がまだ幼生であるのに、生殖細胞が成熟し母体内で発生を始めることで、単為生殖の一形態である。双翅(そうし)類のタマカでは幼生(幼虫)の時期に体内の卵細胞が発生を始め、7~30匹の幼虫が生じる。この幼虫は母体を食べて成長し、やがて親の体壁を食い破って外に出る。同じことを何代か繰り返したのち変態して成虫となる。扁形(へんけい)動物吸虫類の肝蛭(かんてつ)も幼生生殖を行う。卵から孵化(ふか)したミラシジウムという幼生がモノアラガイ(中間宿主)の体内に入り、スポロシストという幼生になる。スポロシストは幼生生殖によって多数のレジアという第二の幼生を生じる。このレジアはさらにその体内にセルカリアという第三の幼生を生じる(スポロシストからセルカリアが生じる場合もある)。セルカリアは中間宿主である貝から泳ぎ出して水辺の草に付着し、ウシなどに食べられてその肝臓内で成熟する。

[内堀雅行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「幼生生殖」の意味・わかりやすい解説

幼生生殖【ようせいせいしょく】

動物の幼生が生育・成熟をまたずに生殖機能が成熟し,生殖を行って次代個体を生じる現象。多くの場合,単為生殖による。吸虫類のジストマはその有名な例で,肝蛭(かんてつ)の幼生などは中間宿主ヒメモノアラガイの体内でこの反復により数百倍に増殖する。昆虫類でもタマバエの幼虫に例がみられ,成虫の出現に至るまでに数代の幼虫世代を重ねる。→ネオテニー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「幼生生殖」の意味・わかりやすい解説

幼生生殖
ようせいせいしょく
paedogenesis

動物の個体発生中,幼生の体内にある卵巣が成熟し,産出された卵が単為生殖的に発生する現象。たとえば扁形動物吸虫類のジストマやカンテツでは,スポロキスト幼生やレディア幼生の体内で卵が発生し,それぞれレディア幼生やケルカリア幼生が生れる。また,タマバエ Miasterでは幼虫期に体内で未受精卵が発生を開始し,7~30個の幼虫が母幼虫体内にできる。子虫は母幼虫体を食い破って外に出て,その後も幼生生殖を繰返す。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の幼生生殖の言及

【ネオテニー】より

…幼形成熟pedogenesisともいう。動物が幼形を保ったまま性的成熟に達し生殖を行う現象。…

【ネオテニー】より

…動物が幼形を保ったまま性的成熟に達し生殖を行う現象。生殖器官に比べからだの発育が相対的に遅れるために起こるもので,幼生生殖とは異なる。メキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum(アホロートルaxolotlと呼ばれる)は原産地のメキシコの泉や湖ではえらをもち,変態しない状態で生殖するが,1865年にパリの植物園で飼われた個体が変態し,水がとぼしいなどの環境では変態して陸に上がることが知られた。…

※「幼生生殖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android