専当(読み)セントウ

デジタル大辞泉 「専当」の意味・読み・例文・類語

せん‐とう〔‐タウ〕【専当】

《「せんどう」とも》
もっぱらその任務にあたること。また、その者。
「造行宮司及び―の郡司」〈続紀・元正〉
寺院雑務を担当した下級の僧。専当法師
白大衆しらだいしゅ神人じんにん宮仕みやじ、―満ち満ちて」〈平家・一〉
荘官の一。荘園運営の実務を担当した者。

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精選版 日本国語大辞典 「専当」の意味・読み・例文・類語

せん‐とう ‥タウ【専当】

〘名〙 (「せんどう」とも)
① もっぱらその事にあたること。ある特定の業務を担当すること。また、その職や人。
正倉院文書‐天平宝字四年(760)二月二五日・造東大寺司牒「以前仏菩薩像、造仏司主典従六位下志斐連麻呂・造寺司主典正八位上安都宿禰雄足二人、専当奉造如件」
② 寺院・神社の職の一つ。下級の雑事に従事する僧侶・神職。
今昔(1120頃か)一七「其の寺に専当の法師有り」
③ 平安時代以降、荘園の荘官の一つ。荘園の実務を担当する荘司
三代格‐一九・延喜二年(902)三月一三日「其称使及庄撿校・専当預等

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改訂新版 世界大百科事典 「専当」の意味・わかりやすい解説

専当 (せんとう)

古代中世の官人,職員,荘官の一。本来は〈専当する〉すなわち〈専ら事に当たる〉の意味で用いられ,奈良時代の用例はすべてこれである。平安時代になると造東大寺所など官寺の造営・修理を行う造寺所の職員として〈造寺専当〉〈造寺所専当〉〈専当〉などの名が,勾当知事などとともに現れる。その後造寺所の活動が衰退する11世紀中ごろから12世紀になると,大寺院の寺院組織改革・整備にともない,この専当は寺院の政所や公文所,修理所などの下級職員として吸収・組織されていった。彼らは別当や三綱の命令をうけ寺内寺領荘園などの経営に従事し,鎌倉時代以降になると公人(くにん)とも呼ばれた。一方,9世紀後半ごろから荘園や国衙領の現地の役人の名称として専当の用例が現れる。荘官としては別当や下司,田所などより下位であった。鎌倉時代になると,この用例は見られなくなる。
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