田所(読み)たどころ

精選版 日本国語大辞典 「田所」の意味・読み・例文・類語

た‐どころ【田所】

〘名〙
平安時代から室町時代にかけて、国衙領現地にあって、雑務一般、特に検田帳や田図などの土地関係の帳簿を取り扱う所。また、その人。
※栄山寺文書‐長和二年(1013)一一月二五日・大和国栄山寺牒「判、件寺愁郡郡所領田畠須下勘田所、〈略〉守藤原朝臣」
② 平安から室町時代、荘園におかれた荘官の一種。田地の管理・掌握にあたった。
東大寺文書‐応保二年(1162)一一月一八日・摂津国椋橋西荘司等陳状案「椋橋西御庄司等解申進陳状事〈略〉案主大江季賢、田所橘季隆」
③ 田地。田のある所。
随筆胆大小心録(1808)二八「婢女午飯の時、田所にひぢりこにまみれし足をすます」

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デジタル大辞泉 「田所」の意味・読み・例文・類語

た‐どころ【田所/田荘】

田のある所。田地。
大化の改新以前の豪族私有地
荘園公領制下で、現地で実務を執った役職

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改訂新版 世界大百科事典 「田所」の意味・わかりやすい解説

田所 (たどころ)

平安~室町時代において,国衙や荘園・公領の現地にあって,諸雑務とくに土地関係の帳簿を扱う役所ないし職掌,またそれに従事する人をいう。大別すると政府の行政機構としてのそれと,荘園の職掌・荘官としてのものとがある。歴史的には前者が先行し,後者がこれにつづく。文書のうえでの初見は964年(康保1)9月10日の大和国都介郷刀禰等解案で,広瀬・薦生両牧の立券につき勘解由長官殿帖と郡符を請い,刀禰,前検非違使,内竪の3名とともに〈田所判官代物部〉の署名がある。この場合刀禰らとともに都介郷の有力者の一人として名を連ねているが,判官代という肩書からみて,彼が国衙田所の役人であったことは明らかで,この史料をもって国衙田所の存在を知りうる初見とすることができる。そのころから国衙には税所,大帳所,朝集所,膳所,細工所等の(ところ)が成立し,田所もそのような分課の一つであった。この国衙田所の機能は,国内の社寺等が所領田の確認を国衙に求めたとき,その坪付や明細を多くは朱書で勘合注申する(丹勘という)ことで,常備の民部省図や馬上帳と照合して勘文を作成した。その構成は国や時期により多少の相違があるが,(惣・勘)大判官代と目代の2人がその中心であった。先の〈田所判官代物部〉の署判を,国衙田所の初見としたゆえんである。そして他の〈所〉も同様であるが,田所の責任者はやがて家職として世襲されるようになる。安芸国では1091年(寛治5)田所執事職が,〈数代の所帯〉として譲与の対象とされ,国司は庁宣をもってこれを承認し補任している。このような国衙田所のほか,民部省にも往古の図帳にもとづいて貴族の所領や寺社等の田畠について勘申する〈民部田所〉があったことが,1040年(長久1)3月19日の民部省田所勘文写や62年(康平5)5月13日の伊勢国四天王寺領坪付などから知られる。

 すこし時代が下ると〈富士郡田所職〉(《吾妻鏡》文治3年(1187)12月10日条)など郡田所職も見えるが,これはむしろ以下に述べる荘園の田所職に準ずるものであろう。荘園の田所の初見は,1162年(応保2)11月18日の摂津国椋橋西荘司等陳状案で,荘司として下司,案主,専当とともに〈田所橘季隆〉が署名しているものであり,以来中世を通じて下司,公文,惣追捕使とともにもっとも一般的な荘官名となり,とくに室町時代には公文,惣追捕使とともに三職と呼ばれるようになった。荘官としての田所には給田として年貢・雑公事ともその得分としうる田所給と,雑公事のみを取得しうる田所名が与えられた。また田所職をもつのは一般に公文,惣追捕使と同様,村落領主ないし有力名主層であり,下司や預所の命に従って荘務に従事した。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「田所」の解説

田所
たどころ

田文所とも。古代~中世に田地を管理した部署・役職の名称。平安時代に在庁の分掌する国衙(こくが)機構の所(ところ)の一つとして諸国の検田などを担当し,国内の田地を掌握するための関係文書の作成と管理を行った。平安末期からは荘園でも現地管理を行う荘官の名称としてみられるようになる。

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普及版 字通 「田所」の読み・字形・画数・意味

【田所】でんしよ

田地。

字通「田」の項目を見る

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