寛骨(読み)カンコツ

デジタル大辞泉 「寛骨」の意味・読み・例文・類語

かん‐こつ〔クワン‐〕【寛骨/×臗骨】

骨盤左右の壁を形成する左右一対の骨。腸骨座骨恥骨三つ扁平骨へんぺいこつが癒合してできたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寛骨」の意味・わかりやすい解説

寛骨
かんこつ

骨盤の左右壁をつくる1対の扁平骨(へんぺいこつ)をいう。古くは臗(『解体新書』での記載)と書き、「広い骨」の意味であった。古いラテン名では「無名骨」とか「窓のない骨」とよんだ。現在のラテン語学名Os coxaeは「腰の骨」とか「股(また)の骨」の意味をもつ。寛骨は、元来は腸骨、坐骨(ざこつ)、恥骨の3個の骨が癒合してできたものである。この3個の骨は、16~17歳くらいまでは互いに軟骨によって結合しているが、それ以後は完全に化骨癒合し、1個の寛骨となる。腸骨は寛骨の上半部を占め、扇状に広がった扁平状の部分で、この内側面上部はおもに腸を支える。坐骨はその後下部、恥骨は前下部につながる部分である。椅子(いす)に座ったとき、椅子面に接する出っ張った骨の部分は坐骨結節という肥厚部である。坐骨と恥骨とは坐骨下枝と恥骨下枝とによって結合し、閉鎖孔をつくっている。3個の骨の結合部は寛骨外面のほぼ中央部にある椀(わん)状のくぼみである寛骨臼(きゅう)のなかにあたる。寛骨臼には大腿骨頭(だいたいこっとう)が接し股関節(こかんせつ)を構成している。

[嶋井和世]


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百科事典マイペディア 「寛骨」の意味・わかりやすい解説

寛骨【かんこつ】

骨盤の主体となる人体で最大の扁平(へんぺい)骨で下肢帯として脊椎仙骨)と下肢骨との間をつなぐ。本来腸骨,恥骨,座骨の3骨からなるが,成人では完全に1骨に融合している。上部の広い腸骨は内面に腸を入れる腸骨窩(か)があり,外面には股(こ)関節をつくる大きなくぼみ,寛骨臼(きゅう)がある。その上縁は腸骨稜(りょう)で側腹部の下方に〈こしぼね〉として触れる。前下部は外陰部に近いので恥骨と呼ばれ,正中で左右のものが軟骨でつながり恥骨結合をつくる。後下部の座骨は下方に座骨結節という突起を出し,すわる場合に椅子(いす)の座面に相対する。
→関連項目座骨恥骨腸骨

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寛骨」の意味・わかりやすい解説

寛骨
かんこつ
hip bone

骨盤部分を構成する左右1対の不規則形の骨。腸骨,坐骨および恥骨が癒合してできた骨で,これらの癒合部の外側面には寛骨臼という深い関節窩があり,ここに大腿骨頭が入って股関節を形成している。その下方には坐骨と恥骨で囲まれた閉鎖孔と呼ばれる大きな穴がある。左右の寛骨は後方で仙骨をはさみ,前方では軟骨性の恥骨結合によって結合し,骨盤を形成する。

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世界大百科事典(旧版)内の寛骨の言及

【骨盤】より

… 四足動物になると,後肢が地上で体を支えることと関連して腰の骨格ががんじょうになった。そしてかならず腸骨・恥骨・坐(座)骨という3種の骨が片側の骨盤(これを寛骨という)を構成するようになる。寛骨の背方部は腸骨,腹方前部は恥骨,腹方後部は坐骨で占められ,中央部でこれら3骨が合するところの外側面に深いくぼみ(寛骨臼)があって,ここに後肢の基部骨格である大腿骨の骨端がはまりこんで関節する。…

※「寛骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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