和韻詩(読み)わいんし(英語表記)hé yùn shī

改訂新版 世界大百科事典 「和韻詩」の意味・わかりやすい解説

和韻詩 (わいんし)
hé yùn shī

中国の詩で,別人の詩に用いられている韻字同類の韻を用いたり,あるいはそこに用いられている韻字をそのまま用いて作ったりした詩をいう。〈依韻〉〈用韻〉〈次韻〉の3種類がある。

 〈依韻〉というのは,原作がたとえば上平一東の韻であるならば,それにあわせて上平一東の韻字を用いて作った詩をいい,和韻詩の中でもっともたやすい遊びである。〈用韻〉というのは,原作において用いられている韻字を,順序不同でそのまま使いこむ作り方で,韻字の種類が制限されるという制約がともなう。〈次韻〉というのは,原作に用いられている韻字を,その順序のままに用いて別の詩を作るもので,和韻詩のうち最もきびしい制約を受けることになる。

 六朝(りくちよう)の宮廷社会で,数人の詩人が集まって〈賦韻〉という詩作の遊びが行われたが,この〈賦韻〉の場合には,それぞれに韻字1文字が与えられて,それをもとに他の任意の韻字を用いて作る場合と,同類の韻字数字が与えられて,その韻字の範囲内で作詩を楽しむということが行われたが,それは後にいう〈依韻〉〈用韻〉と同じことになる。〈依韻〉〈用韻〉の詩を作る遊びは,そうしたことから誕生したのであるが,やがて唐代になると,親密な交友の象徴として,そうした作詩が盛んに行われるようになった。

 和韻詩のうち最もきびしい制約を受ける〈次韻〉の遊びは,中唐の白居易(楽天)と,親友元稹(げんしん)(微之)との間において始まり,また,白居易と劉禹錫(りゆううしやく)との間においても行われ,それ以後,親友の応和詩のひとつの型になった。晩唐では皮日休と陸亀蒙との間に,たくさんの〈次韻〉詩がある。中唐の柳宗元,晩唐の魚玄機,鄭谷韓偓(かんあく),韋荘らにも,何首かの〈次韻〉詩がある。〈次韻〉詩の風習は,中唐から始まるということが,現在では定説になっているが,そのことは中唐詩人たちの詩作の力量と,詩人どうしの交友関係の親密さとを象徴的に示すものでもある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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