呼吸をつかさどる気管・気管支・肺

からだと病気のしくみ図鑑 の解説

呼吸をつかさどる気管・気管支・肺

体内に取り込まれた空気は気管気管支を通り、大切に肺胞まで届けられます。


●空気をガードするしかけ
喉頭から肺へのびる気管は、直径約15㎜、長さ約10㎝--。軟骨と筋肉でつくられている管状の器官です。
私たちは、呼吸が止まると生命を維持することができません。そのため空気の通り道となる気管は、管をガードするように気管軟骨というU字形の軟骨が積み重なり、気管が狭まらないよう確保されています。
気管から枝分かれした2本の気管支(主気管支)は、右肺と左肺に分かれ、さらに肺のなかで20回ほど分岐を繰り返して肺のなかに広がっています。
分岐した気管支は先端から末端へ向かって、細気管支、終末気管支、呼吸気管支、肺胞管となり、終点は肺胞がブドウの房のようにつながった形状になっています。

肺に空気を送り込むしくみ
呼吸筋の作用による肺の拡張で、鼻や口から空気を吸い込むと、空気は咽頭で合流し、気管から左右の肺へ運ばれ、最終的に肺胞へ送られます。
途中、気管や気管支の内面粘膜や線毛が、通過する空気中の異物細菌などを捕らえます。このように気管や気管支は、空気清浄機のように空気中の異物をろ過しつづけ、清浄な空気を肺へ送るのです。途中で捕らえられた異物や細菌は、咳やくしゃみ、痰と共に口や鼻から排出されます。

●肺のプロフィール
肺は脊椎肋骨、胸骨で囲まれた臓器です。
灰は呼吸を通じて、空気から酸素を体内に取り込むという、大切な役割を担っています。
しかし、肺は自らの力で空気の出し入れはできず、胸壁の拡大・縮小にしたがって空気の吸入・排出を行っています。
また、肺の表面を覆う胸膜という軟らかい膜が、胸壁と肺との間で起こる衝撃を緩和しています。
肺の構成は上葉、中葉、下葉、の3つに分かれた「右肺」、上葉、下葉に分かれた「左肺」の2つで1対になります。
左肺が右肺よりも少し小さいのは、心臓が近くにあるためです。
肺のなかは気管支と心臓からつながる肺動脈肺静脈がすみずみまでのびていて、それぞれが肺胞に入り込んでいます。

●表面積60㎡に及ぶ肺胞
気管支が分岐した呼吸細気管支の末端に、ブドウの房のように複数ある小さな袋が肺胞です。
一つ一つの肺胞の外側には、肺動脈、肺静脈からそれぞれ分岐した肺胞毛細血管が走っていて、この毛細血管内の血液二酸化炭素と、肺胞内の酸素がガス交換を行っています。
一つひとつの肺胞は微小ですが、左右2つの肺に約6億もの肺胞が広がり、その表面積は60㎡にも及ぶといわれます。

■肺内の血管のしくみ
肺には2種類の血管があります。1つは血液ガス交換をするための「機能血管」で、心臓の右心室から出ている肺動脈から肺胞までをつないでいます。ガス交換をしたのちに肺静脈となり、心臓の左心室へつながります。
もう1つは、肺そのものを養っている「栄養血管」です。栄養血管へは直接大動脈から血液が送られ、大静脈へ戻っていきます。

●酸素と二酸化炭素のガス交換
肺の役割は、血液に酸素を送り、血液から二酸化炭素を受け取るという、血液中の"ガス交換"です。
ガス交換を行うのは、気管支の末端とつながる"肺胞"です。
安静時、直径約0.2㎜の袋状の肺胞は、壁も非常に薄く、表面を網の目のように走る肺胞毛細血管と肺胞との間で、酸素と二酸化炭素の交換を行います。
このガス交換時、赤血球に含まれるヘモグロビンのはたらきが重要となります。
ヘモグロビンは、血中の酸素が濃いところでは酸素と結合し、薄いところでは酸素を放出します。
また、二酸化炭素が濃いと二酸化炭素と結合し、薄いと放出するはたらきも併せもっています。
全身から肺に戻ってきた二酸化炭素を多く含んだヘモグロビンは、肺のなかで二酸化炭素を放出し、新しい酸素を取り入れて、再び全身へと出ていきます。
そして、酸素を必要とする細胞をみつけると、ヘモグロビンは間質液という組織間液のなかに酸素をうつし、細胞はそこから酸素を受け取ります。
逆に細胞からは間質液中に不要となった二酸化炭素が排出され、それが血液に取り込まれて肺に運ばれていきます。
肺胞内のガス交換を「外呼吸」、全身の細胞とのガス交換を「内呼吸」といいます。
全身から心臓に戻された二酸化炭素を含んだ血液は、肺内で新たな酸素を受け取り、再び勢いよく全身に送り出されていきます。

出典 法研「からだと病気のしくみ図鑑」からだと病気のしくみ図鑑について 情報