取下(読み)とりくだす

精選版 日本国語大辞典 「取下」の意味・読み・例文・類語

とり‐くだ・す【取下】

〘他サ四〙
① 手にとって運びおろす。
説経節あいごの若(山本九兵衛板)(1661)六「あじゃり聞召、こまのだんを取下し、一ざ二ざまでたき給ふ」
② 高い地位からおろす。地位を下げる。
※陽明文庫本平治(1220頃か)上「少納言は一の仁も成なんどして、左右なくとり下されぬ官也」
③ つかまえて都から地方へ送る。逮捕して下向させる。
義経記(室町中か)五「東の人は情なきと聞けば、今にとりくだされて、如何なる憂目をか見んずらん」

とり‐おろ・す【取下】

〘他サ五(四)〙
① 上にある物を手に取って下に置く。
※枕(10C終)一二五「髪みじかき人の、物とりおろして、髪けづりたるうしろで」
貴人の前から物をさげる。
※枕(10C終)二三「御硯とりおろして、『とくとく、ただ思ひまはさで〈略〉ふとおぼえんことを』と責めさせ給ふに」
頭髪などをたらしさげる。
蜻蛉(974頃)中「廿日ばかりおこなひたる夢に、わが頭をとりおろして、ひたひをわくとみる」

とり‐さげ【取下】

〘名〙
① 差し出したり預けたりしたものをとりもどすこと。
② いったん提起した訴訟や申立てなどを撤回すること。
刑事訴訟法(明治二三年)(1890)五五条「告訴告発は其取下を為し、又は其申立を変更することを得」
江戸時代水利の便が悪くなったり、新田の地味が熟さなかったりする場合に、田の地位を引き下げ、または地目を畑に変更すること。
地方落穂集(1763)五「田方地所に寄用水の手絶候か、亦は仔細等有之、畑成に願取下げに致候節」

とり‐さ・げる【取下】

〘他ガ下一〙 とりさ・ぐ 〘他ガ下二〙
一度差し出したものや預けたものをとりもどす。
大鏡(12C前)二「東宮の御くらゐとりさげられたまへることは」
② いったん提起した訴訟や申立てなどを撤回する。〔民事訴訟法(明治二三年)(1890)〕

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普及版 字通 「取下」の読み・字形・画数・意味

【取下】しゆか

へりくだる。・韓〔柳子厚墓誌銘〕居、里に相ひし、酒(しゆし)戲して相ひ(ちやうちく)し、(くく)として強(し)ひて笑語して以て相ひ取下し、手を握り肝を出だして相ひ示す。

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