少納言(読み)しょうなごん

精選版 日本国語大辞典 「少納言」の意味・読み・例文・類語

しょう‐なごん セウ‥【少納言】

〘名〙
① 令制で、太政官職員。外記(げき)を率いて太政官内の事務局を構成していた。外印(太政官印)や鈴印・伝符などを保管する。従五位下相当。すないものもうすつかさ。
続日本紀‐和銅五年(712)一二月丁巳「少納言冝官長、然後更奏印上レ之」
蜻蛉(974頃)上「少納言の、年へて四品になりぬれば」
② (清少納言女流作家であったところから) 俗に、文学少女をいう。〔現代語大辞典(1932)〕

すない‐ものもうすつかさ ‥ものまうすつかさ【少納言】

〘名〙 令制で、太政官の官人。外印(太政官印)・鈴印・伝符などの保管・出納にあたり、また文書事務の責任も持つ。従五位下相当の官。すないものもうし。しょうなごん

すない‐ものもうし ‥ものまうし【少納言】

〘名〙 =すないものもうすつかさ(少納言)〔二十巻本和名抄(934頃)〕

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デジタル大辞泉 「少納言」の意味・読み・例文・類語

しょう‐なごん〔セウ‐〕【少納言】

律令制で、太政官だいじょうかん判官じょう外記げきを率いて官印の管理や太政官の事務をつかさどり、侍従を兼ねた。すないものもうし。すないものもうすつかさ。

すない‐ものもうし〔‐ものまうし〕【少納言】

しょうなごん(少納言)」に同じ。〈和名抄

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改訂新版 世界大百科事典 「少納言」の意味・わかりやすい解説

少納言 (しょうなごん)

日本古代律令制の官職の一つ。もと,7世紀後半の天武朝に設置された太政官は,納言(ものもうすつかさ)という単一の官職で構成された官司であったと推定される。この納言は天皇に近侍して,天皇の命令を臣下に宣し,臣下の意見を天皇に奏することを任とした。飛鳥浄御原令(689施行)の官制で納言は大納言中納言,小納言に分けられた。しかし701年(大宝1)の大宝令の官制では中納言が廃止され,大納言には侍奉官,奏宣官の任とともに議政官としての権能が付与されたが,小納言改め少納言は侍奉官,奏宣官にとどめられた。定員は3人で,その相当位は従五位下。大納言のもとにあって小事を奏・宣し,駅鈴,伝符,官印(太政官印)等の管理をつかさどる。天皇に近侍する官であるので,少納言は同じく侍奉官で中務省の品官(ほんかん)である侍従を兼任する。しかし9世紀以降,奏宣官としての実権は蔵人(くろうど)に移った。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「少納言」の解説

少納言
しょうなごん

律令制の太政官職員。従五位下相当で令制の定員は3人。808年(大同3)に1人増員。令制では大納言のもとに属すが,朝政に参議して大事を奏宣する大納言とは異なり,尋常の小事のみを奏宣(公式令便奏式)し,あわせて駅鈴・伝符・内印の授受,太政官印の捺印の監督を行う。天皇に近侍するため中務省品官の侍従を兼任し,その定員にも数えられた。前身は天武朝の納言で,飛鳥浄御原(きよみはら)令の施行で大納言・中納言・小納言にわけられたが,機能の違いはなく,大宝令施行で中納言が廃止されるとともに,朝政参議の機能が大納言に限定され,少納言は天皇に近侍し奏宣を行うのみとなった。平安初期以降,奏宣の機能の実質は蔵人(くろうど)に移るが,儀式などでの重要性は長く残った。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「少納言」の意味・わかりやすい解説

少納言
しょうなごん

令制(りょうせい)官職の一つ。「すないものもうし」とも読む。太政官(だいじょうかん)の少納言局に属し、駅鈴、内印(天皇御璽(ぎょじ)の印)、伝符(でんぷ)(郡馬を徴発する符)、飛駅(ひえき)の函鈴(かんれい)(急を要する場合)を取り扱い、また外印(げいん)(太政官印)を押すときに監督する。定員は3人で、いずれも侍従(じじゅう)を兼ね、地位は低いが重要な職であった。808年(大同3)定員外に1人増加、翌年また1人を追加したが、813年(弘仁4)定員の3人に戻した。

[渡辺直彦]

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百科事典マイペディア 「少納言」の意味・わかりやすい解説

少納言【しょうなごん】

律令制で,天皇に侍(じ)して,駅鈴(えきれい)の交付や天皇印の押捺(おうなつ)などの小事を命令・報告する官。定員3人。侍従を兼ねる。弁官(べんかん)・外記(げき)とともに太政官(だいじょうかん)の事務部門の要職だったが,平安初期以後は蔵人(くろうど)が実権をにぎり,閑職となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「少納言」の意味・わかりやすい解説

少納言
しょうなごん

令制における太政官判官。詔勅宣下のことを司り,駅鈴内印 (天皇御璽) ,外印 (太政官印) の出納を取扱った。定員3人で侍従を兼任した。弘仁1 (810) 年蔵人所が設置されると主要な職務はそれに移り職権は弱まった。

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朝日日本歴史人物事典 「少納言」の解説

少納言

生年:生没年不詳
室町幕府6代将軍足利義教の仕女,義教の残忍峻烈な性格のため尼にされた。長谷川某の息女。『看聞日記』永享4(1432)年8月6日条によれば,申次の誤りがあったとして室町殿(義教)に打擲され,髪を切られた。さらに義教はこれを尼衆にして法華寺へ追い下し,父長谷川の所領をも没収した。

(勝浦令子)

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旺文社日本史事典 三訂版 「少納言」の解説

少納言
しょうなごん

律令官制の太政官の中に置かれた官職
太政官3局の少納言局に置かれ,詔勅の伝宣,天皇印・太政官印・駅鈴の出納管理にあたった。地位は低いが要職で定員は3〜5名くらい。のち蔵人 (くろうど) の設置によって実権を失った。

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