力動精神医学(読み)りきどうせいしんいがく(英語表記)dynamic psychiatry

改訂新版 世界大百科事典 「力動精神医学」の意味・わかりやすい解説

力動精神医学 (りきどうせいしんいがく)
dynamic psychiatry

精神医学上の一立場をあらわす概念。精神症状や精神現象を把握するのに,ある静的な横断面における状態像を記述し,分類していく記述精神医学descriptive psychiatryに対し,精神現象の成立メカニズム,意味を縦断的かつ動的に把握,理解しようとする方法をとる。その中心となる理論は,フロイトの精神分析であるが,A.マイヤー精神生物学の考え方も同じ系列に属し,彼のいたアメリカにおいて盛んになった。精神症状を個人の素質という面だけでなく,心理・社会的な諸力との関連のなかでとらえることによって,予防的な働きかけも可能となるし,精神療法も重要視されることになる。精神衛生活動も力動精神医学から生まれたといってよいであろう。日本では,第2次世界大戦前はドイツ流の記述精神医学が中心だったが,戦後はアメリカ流の力動精神医学が主流となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「力動精神医学」の意味・わかりやすい解説

力動精神医学
りきどうせいしんいがく
dynamic psychiatry

人間の存在を生物・心理・社会的な力の相互的因果関係のなかでとらえようとする方法論による精神医学。精神力学を鍵概念とし,記述精神医学に対する立場であるが,記述精神医学を否定するものではない。力動精神医学の開祖の一人とされる A.マイヤーは,イギリスの H.ジャクソンの器質力動論,ドイツの E.クレペリンの記述精神医学,アメリカの哲学者 J.デューイプラグマティズムを統合しようと試みた。ちょうどその頃 (1909) ,S.フロイトがアメリカを旅行し,多くの支持者を得たので,精神分析的精神医学のことを力動精神医学と呼ぶ傾向が強くなった。しかし元来は,20世紀初期のアメリカ精神医学の多面的かつ統合的な方法論をさす。

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