凝・痼(読み)しこる

精選版 日本国語大辞典 「凝・痼」の意味・読み・例文・類語

しこ・る【凝・痼】

〘自ラ五(四)〙
① ある考えに熱中したり、ある行為に専念したりして、身じろぎもせずにいる。
※書陵部本応仁記(15C後)「切て出んとて、打物を小膝にのせて錣(シコリ)たる体は」 〔日葡辞書(1603‐04)〕
※天理本狂言・蟹山伏(室町末‐近世初)「ふきのゐんをむすびかけ、しこっていのる」
② ある動作をそのことに集中して盛んに行なう。また、盛んに行なわれる。動詞の連用形につき、補助動詞的にも用いられる。
※三体詩幻雲抄(1527)「風は順風に吹しこりたぞ」
人情本・春色恵の花(1836)初「心はおなじ半次郎も、これよりしこッてかよふほどに」
③ 集まって一団となる。
※中尾落草子(16C後)「かべぎはにもなるならば、たてをばすててしこるべし」
※日葡辞書(1603‐04)「ニンジュガ xicotte(シコッテ) イル〈訳〉人々が敵に対抗して一団となり、かたまったようになっている」
意地をはる。
※浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)一「親方が高ばる。手代がこまる。こっちはしこる。親父は叱る」
筋肉などが凝ってかたくなる。かたまりやしこり①ができる。
洒落本・真女意題(1781)陸野奥右衛門国詞「しこる かたくなる事」
⑥ おさえてもおさえきれないようにわきおこってくる。
滑稽本・七癖上戸(1810)上「又臍(へそ)の下から笑ひがしこって、くつくつくつくつ」
弾力があって適度な固さである。しこしこする。
※湯葉(1960)〈芝木好子〉「舌ざわりは少ししこって、しかも柔らかく」
[補注]原義諸説あって統一的な説明は困難である。「万葉‐一二六四」の「西の市に但ひとり出でて眼並べず買ひてし絹の商自許里(あきジコリ)かも」の「あきじこり」が関連あるかとされているが、解釈が難しい。

しこり【凝・痼】

〘名〙 (動詞「しこる(凝)」の連用形の名詞化)
① 筋肉などが凝ってかたまること。固まって塊状となること。また、そのかたまり。
※書言字考節用集(1717)五「痤 シコリ 〔説文〕小腫也・ 同 〔匀略〕腫旁出也」
※黴(1911)〈徳田秋声〉二一「(シコリ)のある処を手で示した」
物事を解決した後でもまだ残っているすっきりしない気分感情のわだかまり。
※密猟者(1939)〈寒川光太郎〉四「シコリがとれた感じでひどく愉しくさせた」

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