上水
じょうすい
主として飲料用に溝または管に通じた清水。普通,江戸時代の上水道をいい,河川池沼などから導かれたもので,江戸,水戸,金沢をはじめ城下町に多く設けられた。江戸では,神田上水,玉川上水が著名。徳川家康の江戸入部以来,漸次人口の増加に伴い,飲料水に不足をきたしたので,まず天正年間 (1573~92) の末頃,井の頭 (いのかしら) 池から水を引いて神田上水を創始した。玉川上水は多摩川から水を引き,承応2 (1653) 年着手し翌年完成した。上水の管理者は,初めは上水奉行であったが,のち町年寄,町奉行,普譜奉行,作事奉行と幾多の変遷を経た。経費は水料銀と呼ばれる武士や庶民への高割による賦課によってまかなわれた。明治末期,改良水道の普及に伴い廃絶した。
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うわ‐みず うはみづ【上水】
〘名〙
① 水の上の方の部分。
※製葛録(1828)葛製法「濁り水を〈略〉半日も置て見れば上水(ウハミヅ)澄み居るなり」
② 物事の初めの部分。また、初めの良いところ。
※洒落本・令子洞房(1785)馴染の弁「女郎買弐十会くらゐまでは、あそびのうわ水也」
③ 江戸時代、大坂堂島米市場における水方
(みずかた)の中の上役のこと。相場の立会いに柝
(き)を打って
仲買人を集め、立会
(たちあい)が終わると水をまいて仲買人を退散させる役。
※稲の穂(1842‐幕末頃)「上水四人を通路人と言、下水八人を小使之者と言」
④ 精液をいう。〔日本性語大辞典(1928)〕
じょう‐すい ジャウ‥【上水】
〘名〙
① 飲料とするため、溝
(みぞ)、または
導管によって供給される水。⇔
下水。
※俳諧・橋南(1705か)「撥にきく目は右ばかりなり〈青峨〉 上水の普請に付て飛蛍〈仙鶴〉」
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デジタル大辞泉
「上水」の意味・読み・例文・類語
うわ‐みず〔うはみづ〕【上水】
1 水の上のほうの部分。上澄みの水。
2 江戸時代、米相場の立ち会いに、仲買人を集める合図の柝を打ち、終了の際は水をまいて仲買人を散会させた役。
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上水
天然の水を処理して飲料に適したものにして消費者に配布する水.汚物の除去,殺菌が行われている.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典内の上水の言及
【上水道】より
…都市や集落へ飲料水を供給する施設の総体をいう。日本では江戸時代初期に生活用水の供給を主目的とする水利施設が初めて設けられたときに,それまでの農業用水施設と区別して上水,または水道ということばが用いられた。現在では都市への用水供給施設のうち,飲用(家庭用)を目的に含めていない水道(工業用水道など)に対して,飲用水の供給施設を一般に上水道と呼んでいる。…
【水呑】より
…したがって村の寄合にも参加しえず,原則として用水・林野の共同利用,共同管理にも参加しえない。こうして水呑は,用水の利用から排除されているが,生存のために不可欠な上水(じようすい)の利用については,飲用水としての利用だけが許されていることから,水呑という呼称が生じたのであろう。中期以後の商品経済の農村への浸透は本百姓の分解をもたらし,水呑が広範に出現した。…
※「上水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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