ローマ条約(読み)ローマジョウヤク

デジタル大辞泉 「ローマ条約」の意味・読み・例文・類語

ローマ‐じょうやく〔‐デウヤク〕【ローマ条約】

1957年3月にローマで調印された、欧州経済共同体EEC)条約と欧州原子力共同体EURATOM)条約のこと。ベルギードイツフランスイタリアルクセンブルクオランダの6か国が調印し、1958年1月に発効。現在もEU欧州連合)の基本条約としての効力をもつ。

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精選版 日本国語大辞典 「ローマ条約」の意味・読み・例文・類語

ローマ‐じょうやく ‥デウヤク【ローマ条約】

〘名〙
① EEC(ヨーロッパ経済共同体)を設立するために一九五七年、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダの六カ国で締結された条約。正式名称は、ヨーロッパ共同体設立条約。
著作権では保護されない実演、レコード、放送を、保護する目的で、一九六一年に締結された条約。正式名称は、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローマ条約」の意味・わかりやすい解説

ローマ条約
ろーまじょうやく

1957年にローマで締結されたEEC(ヨーロッパ経済共同体)条約とEURATOM(ユーラトム)(ヨーロッパ原子力共同体)条約をいう(ともに1958年発効)。当時これに署名したのはフランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの6か国。とくにEEC条約をローマ条約とよぶことが多い。EEC条約で設けられたECの機関と諸政策が、今日のヨーロッパ連合(EU)の基礎をなす。

 ECは、European Communitiesという複数形である。ECSCヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)条約(1951年締結、1952年発効)、EEC条約、EURATOM条約で設立された、石炭鉄鋼、経済、原子力という別々の3共同体の機関が、1967年の機関統合条約によりEECの機関を共通機関とすることになって一体的に運営されるようになり、そこでEC(複数形)の中心はEECとなった。

 EEC条約は、機関としては、欧州委員会(ヨーロッパ委員会。各国の利害から独立に行動する委員で構成)、閣僚理事会(各国政府の閣僚代表で政策分野別に構成)、欧州議会(ヨーロッパ議会。当初は各国議会の議員代表が兼職、1979年から直接選挙)、そしてEC裁判所という主要機関を置いた。また、EEC条約は、対内的には、加盟各国の間で「共同市場」を設立し、商品・サービス・資本・労働者の自由移動が可能な経済市場をつくることを目ざし、また共通農業政策も展開できるものとした。対外的には、共通通商政策を域外国に対して展開できるものとした。こうした機関や政策の原型が現在のEUに継承されている。

[中村民雄 2018年6月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ローマ条約」の意味・わかりやすい解説

ローマ条約 (ローマじょうやく)
Treaty of Rome

〈ヨーロッパ経済共同体European Economic Community(EEC)を設立する条約〉の通称で,EECの設立にあたっての基本条約である。1957年3月にフランス,西ドイツ,イタリア,オランダ,ベルギー,ルクセンブルクの6ヵ国によってローマで締結され,58年1月1日に発効した。同時に,ユーラトム(EURATOM)を設立する条約も締結されたため,この両者を総称してローマ条約という場合もある。ローマ条約は全部で248条から成るが,まず2条でEEC設立の目的を,共同市場の形成,共同体全体の経済成長,生活水準の向上,加盟国間の関係の緊密化であると述べている。次いで3条で,そのための方策が,関税,数量割当ての撤廃,第三国への共通関税,労働・資本の自由移動,共通農業政策,共通運輸政策,公正な競争の確保,加盟国の経済政策の調整と国際収支の均衡維持,各国国内法の接近,労働者のための社会基金の設立,投資銀行の設立,域外諸国との連係強化の11項目にまとめられている。そして9条から136条までで,これらの方策を実施するための細かい規定が述べられている。4条に,EECの諮問,意思決定,運営,紛争処理のために,総会,経済社会評議会,理事会,委員会,司法裁判所を設けることが規定され,137条から246条までに,これら機関の設立と運営に関する細かい規定がある。ローマ条約は,1965年のEEC,ECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体),ユーラトムの3共同体の機構的統合の際のブリュッセル条約,73年のイギリス,デンマークアイルランド,80年のギリシアのECへの新規加盟にともなうその条件と調整に関する文書に補完されながら,現在もECの基本条約としてその運営を規定する有効性をもっている。ローマ条約は,加盟国の脱退,条約の廃棄,条約の期限についての条文をもっていないという特色をもっており,EEC原加盟国の統合への意志の強さを示しているといえよう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローマ条約」の意味・わかりやすい解説

ローマ条約
ローマじょうやく
Treaties of Rome

1958年1月1日発効した「ヨーロッパ経済共同体 EECを設立する条約」。 EEC条約ともいわれる。 57年3月 25日フランス,西ドイツ,イタリア,ベルギー,オランダ,ルクセンブルクの6ヵ国によってローマで調印されたため,ローマ条約と通称される。本文 248条,その付属議定書,ヨーロッパ投資銀行,東西両ドイツ間の貿易,フランス,イタリア,ルクセンブルク各国の特殊問題などの9議定書,海外領域との連合,バナナ,コーヒーの輸入についての3協約,共通機関に関する協約および最終調書より構成されている。 EECという単一の共同市場を 12年間で完成することを第一の目標とし,そのほか域内における労働や資本の移動の自由,さらに農業,運輸,通商,金融,社会という広範な分野にわたる共通政策の樹立など密度の濃い経済統合をうたい,第2次世界大戦後の国際経済に新しい活力を導入した。ローマ条約による共同市場の創設はその後順調に進み,域内関税の撤廃,対外共通関税の設定など,いわゆる関税同盟は予定より1年半早く 68年7月に達成された。また前年の 67年5月,新たにイギリス,アイルランド,デンマーク,ノルウェーが加盟を申請。フランスの C.ドゴール大統領の2回にわたる加盟拒否など紆余曲折を経て 72年1月 22日,上記4ヵ国がブリュッセルで加盟条約に調印,73年1月1日から9ヵ国による拡大 ECが発足し (ノルウェーは国民投票の結果,反対多数で結局加盟しなかった) ,81年1月1日ギリシアが加盟し,さらに 88年にはスペインとポルトガルが加盟して 12ヵ国となった。関税同盟を達成した ECは 70年3月6日,共通農業財政規則をも成立させた。 91年 12月7日にオランダのマーストリヒトで開かれた首脳会議で,外交・安全保障政策の共通化と単一通貨 ECUを基礎とした経済・通貨統合をはかることを骨子とする欧州連合 EUの創設に合意し,ローマ条約の改訂に合意した。 92年2月この合意を基礎にマーストリヒト条約が調印され同年 11月1日発効した。

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百科事典マイペディア 「ローマ条約」の意味・わかりやすい解説

ローマ条約【ローマじょうやく】

(1)1950年ヨーロッパ審議会(西欧10ヵ国により1949年設立)が中心となってローマで締結された条約。正称は〈人権および基本的自由の保護のための条約〉でヨーロッパ人権条約とも。世界人権宣言,国連憲章人権規定に欠けている法的保障を国際法的に確立。ヨーロッパ人権委員会,ヨーロッパ人権裁判所を設けている。現在では西欧21ヵ国が加盟し,11件の議定書により成り立っている。(2)1957年フランス・西ドイツ・イタリアおよびベネルクス3国がローマで締結したヨーロッパ経済共同体(EEC)設立条約とヨーロッパ原子力共同体(ユーラトム)設立条約の通称。翌1958年発効。
→関連項目アムステルダム条約単一ヨーロッパ議定書マーストリヒト条約ヨーロッパ共同体

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世界大百科事典(旧版)内のローマ条約の言及

【航空事故】より

…一方,航空事故によって地上の第三者に被害が生じた場合の賠償については,イギリス,ドイツ,イタリア各国のように法律の中に特別の規定をもうけている国もあるが,そのような規定のないところも多く,日本でも他の事故と同じように民法により処理されている。なお,外国機が他国の地上第三者に与えた被害に対する賠償については,1952年に締結されたローマ条約の規定があるが,日本はこれに加盟していない。日本の場合,地上に大規模な被害を生じたケースの大部分は駐留アメリカ軍機の墜落による(一部自衛隊機によるものもある)もので,ほとんどは防衛施設庁と被害者の交渉で解決しているが,まれに裁判にもち込まれるものもある。…

【ヨーロッパ連合】より

…イギリスが参加しなかったことによって,以後統合はヨーロッパ大陸のこの6ヵ国によってリードされることになった。このECSCの成功と,ヨーロッパ防衛共同体(EDC)条約の流産によって経済的な統合に重点がシフトし,1957年3月25日には,同じ6ヵ国が二つのローマ条約に調印した。それらに基づき,すべての分野での経済統合をめざすヨーロッパ経済共同体(EEC)と,原子力エネルギーの共同開発と共同管理機構であるヨーロッパ原子力共同体(ユーラトム)が58年に設立された。…

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