モンキチョウ(英語表記)Colias erate

改訂新版 世界大百科事典 「モンキチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンキチョウ
Colias erate

鱗翅目シロチョウ科の昆虫。中型のチョウで,翅の開張は4.5~5cm。和名は紋のあるキチョウの意。ユーラシア大陸から日本全国に広く産し,海岸から高山帯までの草原,河原,牧草地,堤防などに見られる。市街地には少ないが,これは幼虫の好む食草がマメ科の雑草や牧草であることによる。寒冷地でも年2回は発生し,暖地では6回前後出現する。非休眠幼虫で越冬し,日だまりのレンゲやクローバーなどマメ科の植物の葉を食べて冬も緩慢に成長する。早春に出現する個体があるので昔は成虫越冬と考えられ,オツネンチョウ越年蝶)とも呼ばれたが,ヤマキチョウ類,キチョウ類のような成虫越冬の可能性はない。低温時に羽化した成虫は濃色,小型の傾向がある。なお,雌は地色の白いものが多いが,劣性遺伝をする黄色型の雌もまれでない。幼虫の食草は他にダイズニセアカシア新芽)などが知られている。

 近似種に高山チョウのミヤマモンキチョウC.palaenoがある。大きさは前種より少し小さいが翅は厚く,紅色の縁毛が美しい。ヨーロッパ,シベリア,北アメリカ大陸北部などに分布するが,北海道には見られない。幼虫はツツジ科クロマメノキの葉を食べる。年1回,6~7月に出現,高山では雌が8月上旬まで活動する。飛驒山脈と浅間山系に限って分布する。3齢幼虫で雪の下に埋もれて越冬する。雌は日本では白色型のみが知られるが,ドイツあたりでは黄色型も産する。

 モンキチョウ属(英名clouded yellow,米名sulphur)には世界で80種あまりが知られ,グリーンランドから南アメリカ最南端,南アフリカなどまでのおもに乾燥地帯に分布している。オセアニアには産しないが,インド南部,南西アフリカ,メキシコ南部には孤立的にモンキチョウ類が見られる。中央アジアの高山には,ウスバシロチョウ類とともにモンキチョウ類の珍種が多い。シベリア東部などに産するベニモンキチョウC.heosは世界最大(開張5.7cm内外)のモンキチョウである。食草はマメ科,ツツジ科のほか,ヤナギ科も知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンキチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンキチョウ
もんきちょう / 紋黄蝶
eastern pale clouded yellow
[学] Colias erate

昆虫綱鱗翅(りんし)目シロチョウ科に属するチョウ。北海道より南西諸島にわたり広く分布する普通種で、国外では朝鮮半島、中国、台湾(山地)よりインド(山地)、南ロシアにわたる。はねの開張は50ミリメートル内外。雄のはねの地色はつねに黄色、雌では黄色と白色の2通りがある。和名は「紋のあるキチョウ」の意である。かつて別名をオツネンチョウといったが、これは成虫(チョウ)が春早くから飛ぶために、成虫で越年すると誤認されたための名前。早春モンシロチョウなどとともにもっとも早く出現するチョウで、北海道あたりで年に2、3回、九州あたりの暖地では4、5回発生する。幼虫の食草は各種の野生のマメ科植物で、ときにダイズの害虫として知られる。幼虫の状態で冬を越し、早春に蛹化(ようか)する。

[白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンキチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンキチョウ
Colias erate

鱗翅目シロチョウ科。前翅長 32mm内外。翅の地色は雄では常に黄色であるが,雌では黄色と白色の2型がある。前翅表先端は広く黒色で,その中に黄色部がある。後翅表外縁は黒色を帯び,中央部に橙色小紋がある。成虫は年数回出現し,草原,田畑の付近などを敏速に飛ぶ。幼虫はシロツメクサ,アカツメクサ,ゲンゲなどマメ科植物を食べる。日本全土,ユーラシア大陸に広く分布し,日本,サハリン,中国などに産するものを亜種 C. e. poliographusという。

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百科事典マイペディア 「モンキチョウ」の意味・わかりやすい解説

モンキチョウ

鱗翅(りんし)目シロチョウ科の1種。日本全土,朝鮮,中国〜中央アジアに広く分布。開張50mm内外。雄は黄色,翅の外縁部は黒色でその中に黄斑が散在。雌には黄色と白色の2型がある。幼虫はマメ科の草を食べ,幼虫で越冬,成虫は年に3〜4回発生し,種々の花にくる。

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世界大百科事典(旧版)内のモンキチョウの言及

【シロチョウ(白蝶)】より

…幼虫は緑色の,いわゆる青虫で,食草はアブラナ科植物を主とするが,ミヤマシロチョウとエゾシロチョウは体色,食草,幼虫の群生の3点で例外となっている。モンキチョウ亜科はその名のとおり翅の黄色いものが主であるが,雌の翅が白いものもある。モンキチョウ類,キチョウ類,ヤマキチョウ類,ウスキチョウ類などがあげられる。…

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