堤防
ていぼう
embankment
levee
dyke
洪水が河道外に氾濫(はんらん)するのを防止するために、河道に沿って築造される工作物。堤防は土を台形に盛り上げ、締固めてつくられる。堤防の河道側の面を表法(おもてのり)、土地側の面を裏法(うらのり)、天辺を天端(てんば)という。堤防の高さが高い場合は、法面(のりめん)に小段(こだん)を設けることがある。裏法の堤脚部の狭い平場は犬走りという。堤防で守られる土地を堤内地、堤防で挟まれる河道側を堤外地という。下流に向かって左側の堤防を左岸堤、右側の堤防を右岸堤という。堤防には連続堤と不連続堤(霞堤(かすみてい))がある。
堤防は、機能に応じて本堤、副堤(控堤(ひかえてい)、二線堤)、輪中堤(わじゅうてい)、導流堤、背割堤(せわりてい)、越流堤(えつりゅうてい)、囲繞堤(いぎょうてい)、締切堤などの名がつけられる。本堤は河道に沿ってつくられる堤防で、副堤は本堤が破堤した場合に備えて本堤の背後につくられる堤防。輪中堤は、ある特定の地域を洪水から守るためにその地域を囲むようにつくられる堤防。導流堤は、合流点、河口などで流向を調整するためにつくられる堤防。背割堤は、河川の合流点で合流を滑らかにし、互いに悪影響を及ぼさないように河川を分離するためにつくられる堤防。越流堤は、洪水の一部を調節地(遊水地)に導水するために堤防の一部を低くして洪水を越流させるようにした堤防。囲繞堤は、調節地(遊水地)に貯留した水が周辺に拡がらないようにするために調節地を囲むようにつくられる堤防。締切堤は、派川(はせん)を廃川にしたり、新川開削に伴い旧川を締め切る際に派川や旧川を横断してつくられる堤防。
河川流による浸食から堤防を防護するために必要に応じて表法に石、コンクリートブロック、コンクリートなどの護岸を施す。表法の護岸を施さない部分は芝、チガヤなどの植生で防護する。裏法には降雨による浸食から法面を防護するために、芝、チガヤなどの植生を植える。
都市を流れる河川では鉄筋コンクリートや鋼矢板でつくられる堤防(特殊堤)もある。
海岸に沿って高波を防ぐためにつくられる堤防を海岸堤防、高潮・津波を防ぐためにつくられる堤防を防潮堤という。海岸堤防、防潮堤は、天端、表法、裏法をコンクリートやアスファルトなどで覆う三面張りにする。
[鮏川 登]
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堤防
ていぼう
dike, dyke
流水を一定の区域内に制限し,区域外に氾濫させないことを目的として土砂などを盛って造られた土木工作物。河川の洪水氾濫を防止する河川堤防,高潮氾濫を防止する海岸堤防などがある。堤防の上面を天端 (てんば) ,斜面を法 (のり) ,段状になったところを小段あるいは犬走りという。河川堤防の高さは計画高水位からさらに,ある程度の余裕をもたせるのが通常である。法面は芝などを植えて保護するが,流れが強い場所では,石,コンクリートなどで補強する。
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堤防【ていぼう】
海,河川等の水の浸入を防ぐコンクリート,土砂等の構造物。湖水の氾濫(はんらん)を防ぐ湖岸堤防,波浪を防ぐ防波堤や高潮・津波を防ぐ防潮堤などの海岸堤防,洪水の氾濫を防ぐ河川堤防がある。河川堤防は目的・形から本堤,副堤,越流堤,霞堤,瀬割堤,導流堤,輪中堤,横堤,締切堤,山付堤などに分類される。
→関連項目突堤
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デジタル大辞泉
「堤防」の意味・読み・例文・類語
てい‐ぼう〔‐バウ〕【堤防】
[名](スル)
1 河川の氾濫や海水の浸入などを防ぐために、土砂やコンクリートでつくられた構築物。堤。「堤防が決壊する」
2 防止すること。
「必ず健旺の道理、及び善良の慣習を以て、これを―すべきなり」〈中村訳・西国立志編〉
[類語]堤・土手・突堤・堤塘・防波堤
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ていぼう【堤防 embankment】
洪水時に河川が平地にはんらんして人家や耕地などに被害を与えることのないように,または舟運や利水のために水路を固定させる目的で,川を一定の河道の中で流れるようにする構造物。堤(つつみ)とも呼ばれ,土でつくった堤防を土堤または土手という。堤防には人工的なもののほか,自然に形成されるものもあり,自然状態にある河川のはんらんによって,上流から運ばれてきた土砂が河岸沿いに堆積し,背後地より若干高くなったところを自然堤防という。
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普及版 字通
「堤防」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の堤防の言及
【海底地形】より
… 海底扇状地fancone―deep sea fan―deep sea cone―submarine fan―submarine cone―海底または海底谷の集りの末端から外側へ規則的に傾斜していく,比較的滑らかな地形。 海底堤防levee海底谷,海谷またはチャンネルを境する堤。 海峰peak顕著な高まりで,尖っているかまたは頂上がごく限られた広さしかないもの。…
【溜池】より
…これらの事実を基礎に各種の農書にも,溜池築造の適地の選定や,築造技術の詳細な諸事項についての論述が数多く見いだされる。熊沢蕃山は池の築造の地盤に着目し,まず〈根切り〉を行うことを説き,池底からの漏水を防ぐべく,池床の底を堅固に固め,堤は十分に幅広く堅固に,十分の人夫を投じて築くべしとし,佐藤信淵は《堤防溝洫志》に,溜池は土地が高く川水を用水に引き揚げ難い所に築くとし,まず,よく谷川・清水のある場所を考え,その山の形状にしたがって,3方,2方,あるいは丸堤(池の全周を堤で囲む)を築いて谷水を蓄え,堤の大小は溜池面積の広狭に準じ,勾配は内法(うちのり)7寸5分,外法5寸が法であり,堤の内腹は〈ハセネリ〉と称する土性のよい真土(まつち)で塗り込み,下地をよく突き固めておけば漏水がないとしている。また《地方の聞書(才蔵記)》には,よい池とは堤が短く池の内が広く,床はよくつみ,打樋(うちひ)(用水を流し出す樋の位置)は岩か,もし土であっても,水の当たる所は堅い土の場所がよい(池の決壊は樋の場所の崩壊による実例が多い),池床の深浅は両側に山の立つ所は床が浅く,平地の場合は深く,谷に常に水のある所は浅く(すぐ下が岩盤であるから),少々の降雨にも谷底に水のない所は岩盤までが深いから池床には不適であるなどと詳細に述べている。…
【治水】より
…治水は文字どおり水を治めることであるが,河川の氾濫や高潮による被害から住屋,集落,耕地などを守るために堤防を築いたり,河川の流路そのものを変えたり,河川の水流・水量を制御調整するための諸工事を行ったり,河底の土砂をさらえ,流水に障害となる岩石を除去することなどがあげられる。また河川交通の安全や発展のため,河川流路を整備したり運河を開削することもその一つである。…
※「堤防」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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