プロペルティウス(英語表記)Sextus Propertius

精選版 日本国語大辞典 「プロペルティウス」の意味・読み・例文・類語

プロペルティウス

(Sextus Propertius セクストゥス━) 紀元前後の古代ローマ詩人アウグストゥス時代の人。エレゲイアの完成者。「エレゲイア詩集」四巻中の「キュンティアの巻」は有名。生没年不詳。

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デジタル大辞泉 「プロペルティウス」の意味・読み・例文・類語

プロペルティウス(Sextus Propertius)

前1世紀ごろのローマの詩人。エレゲイアの完成者で、ラテン恋愛叙情詩人の代表者一人。「詩集」4巻の中心をなす、キュンティアという女性への恋と失恋をうたった作品が有名。生没年未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「プロペルティウス」の意味・わかりやすい解説

プロペルティウス
Sextus Propertius
生没年:前47ころ-前2以前

ローマの抒情詩人。ウンブリア地方のアシシウム(現在のアッシジ)の裕福な家庭に生まれた。プロペルティウスは,アウグストゥス時代に活躍したラテン詩人たちの中では,ウェルギリウスホラティウスよりも1世代若い。しかし,彼が詩作を始めた時期は比較的早く,前28年ころには,恋愛抒情詩の韻律として確立していた2行単位のエレゲイア(エレジー)の詩型を用いて《詩集》第1巻を公にしている。《詩集》公刊後,彼はアウグストゥスの腹心で文人たちのパトロンでもあったマエケナス庇護を受けるようになった。彼の詩は,4巻の《詩集》になって現代に伝えられており,第4巻の公刊は前16年ころであったと考えられている。前2年に同時代の詩人オウィディウスが彼の死を記しているが,没年は不詳である。

 プロペルティウスは,カトゥルスに始まりオウィディウスに至るラテン恋愛抒情詩の大詩人たちの一人として名高い。先輩詩人ガルスの例に倣い,プロペルティウスは恋愛詩の女主人公をキュンティアとギリシア名で呼んだ。この女性が実在の人物をモデルにしたものか,あるいは作者の想像にもとづくものかという問題は,古代以来詮索の的となっているが,説得力のある結論はまだ出されていない。ともあれ,詩人とキュンティアの恋愛模様,不実な恋人のふるまいに翻弄される詩人の心理をさまざまにつづった詩は,《詩集》1~2巻の中に多数収められている。これらの恋愛詩を同世代のティブルスの作品と比較検討してみると,プロペルティウスの作品は平明さと統一性に欠けるところがあり,そのためか彼の《詩集》の校訂本はまだ権威ある版をみていない。しかし,彼の詩は劇的展開力に富み,また,恋愛心理の葛藤の描写力は,初代の恋愛抒情詩人カトゥルスに比肩する。ラテン恋愛抒情詩の伝統の中で際立った活躍をした彼も,後年はしだいに恋愛詩から遠ざかり,後期の詩は神話に題材を求めたものが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロペルティウス」の意味・わかりやすい解説

プロペルティウス
ぷろぺるてぃうす
Sextus Propertius
(前48ころ―前16ころ)

古代ローマのエレゲイア詩人。アッシジの生まれ。文人保護者マエケナスの文学サロンに属す。『エレゲイア詩集』四巻の中心をなすのは、キュンティアとよぶ女性との恋のいきさつを神話の比喩(ひゆ)を豊富に用いて歌う、難解な、しかし繊細で情熱的な恋愛詩。のちには時代精神に順応して、ローマの伝説物語などもテーマにしている。

[中山恒夫]

『呉茂一訳詩集『花冠』(1973・紀伊國屋書店)』

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百科事典マイペディア 「プロペルティウス」の意味・わかりやすい解説

プロペルティウス

ローマの詩人。キュンティアと呼ぶ女性への恋を歌った詩が《詩集》4巻の大半を占め,恋の諸相を情熱的に描いている。神話伝説を比喩(ひゆ)に用い難解であるが,ゲーテはじめ後世への影響は大きい。

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世界大百科事典(旧版)内のプロペルティウスの言及

【ラテン文学】より

…有力者たちは文人保護に乗り出し,その周囲に一種の文学サークルが作られた。特に顕著だったのはアウグストゥス帝の右腕ともいうべきマエケナスのサークルで,ウェルギリウス,ホラティウス,プロペルティウス,ウァリウスVarius,プロティウス・トゥッカPlotius Tuccaなど,ラテン文学を代表する詩人たちがマエケナスの援助を受けて,職業詩人として活躍し,時代精神の形成に貢献した。メッサラのサークルにはティブルスと,リュグダムスLygdamusやスルピキアSulpiciaが属した。…

※「プロペルティウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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