一人(読み)いちにん

精選版 日本国語大辞典 「一人」の意味・読み・例文・類語

いち‐にん【一人】

〘名〙
① 人、ひとり。また、ひとりの人。いちじん。
※続日本紀‐宝亀一一年(780)六月戊戌「勅〈略〉物天下物非一人用
※発心集(1216頃か)二「年たけたる僧一人(イチニン)あり」
② ある人。なにがし。〔史記‐商君伝〕
③ その土地領域で第一であること。また、その人。第一人者
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「五千両の分限にさされ、一人の才覚者といはれ」
右大臣異称
※有職小説(江戸中)(古事類苑・官位七)「天子を一人(いちじん)太子を一人(いちんど)関白を一所(いちのところ)、〈略〉と云」
天皇の異称。
醍醐寺文書‐延元三年(1338)五月一五日・北畠顕家奏状「一人之出百僚卒従威儀
※読本・昔話稲妻表紙(1806)四「上は一人(イチニン)より下は婆々嫁々にいたるまで」
⑥ 一日一人分の作業量や賃金。〔改正増補和英語林集成(1886)〕

いち‐じん【一人】

〘名〙
※文明本節用集(室町中)「万民主不一人(イチジン)
② (天下の唯一人者という意から) 天皇をいう。上一人(かみいちじん)
本朝文粋(1060頃)一三・北野天神供御幣并種々物文〈大江匡衡〉「或塩梅於天下、輔導一人
※高野本平家(13C前)一「太政大臣は、一人(ジン)師範として、四海に儀けいせり」 〔書経‐君奭〕

ひ‐だり【一人】

〘名〙 =ひとり(一人)(一)
書紀(720)神武即位前・歌謡蝦夷(えみし)を毗(ヒダリ)(もも)な人」

いち‐ひと【一人】

〘名〙 最もすぐれた人。第一人者。
※虎明本狂言・法師が母(室町末‐近世初)「いち人の、みめのよひは、田中ごんのかみのまま娘」

ひっとり【一人】

〘名〙 「ひとり(一人)」の変化した語。
※雑俳・軽口頓作(1709)「もたれたがる・ひっとりひとりお通夜の衆」

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デジタル大辞泉 「一人」の意味・読み・例文・類語

ひと‐り【一人/独り】

[名]
人数が1であること。一個の人。いちにん。「―に一つずつ配る」「乗客の―」
仲間・相手がいなくて、その人だけであること。単独。「―で悩む」「―でいるのが好きだ」
他の人の助けを借りず、その人だけですること。独力。自力じりき。「―ではなに一つ満足にできない」「―で解決する」
配偶者のないこと。独身。「いまだに―でいる」
[副]
物事をその人だけでするさま。単独で。「―読書に励む」「―物思いにふける」
打消しの語を伴って、ある物事だけに限ったことではないという気持ちを表す。ただ。単に。「―現象にとどまらず、本質に迫るべきだ」
ひとりでに。自然に。
「むつかしくもぢれたるもの、―さばくるといへり」〈三冊子・黒双紙〉
[類語]1一人いちにん一名一個一介一員/(2単独単身一つ孤独独りぼっち紅一点孤立人っ子一人一人天下孤高/(3独り立ち独立独立独歩自活自立一本立ち独り歩き自力独力独歩専行独行孤軍奮闘一匹狼アウトサイダー異端者異分子/(4独身独り身独り者未婚シングルチョンガー

いち‐にん【一人】

ひとり。ひとりの人。
「代助は人類の―として」〈漱石それから
その土地や分野で第一であること。
「十ヶ年立たぬうちに五千両の分限にさされ、―の才覚者といはれ」〈浮・永代蔵・二〉
右大臣の異称。
[類語]一人ひとり一名一介一個

いち‐じん【一人】

《天下にただ一人の意》天子。天皇。上御一人かみごいちにん
「―を始めまゐらせて百官皆椒房せうばうの月に涙を落とし」〈太平記・三三〉

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