腹心(読み)ふくしん

精選版 日本国語大辞典 「腹心」の意味・読み・例文・類語

ふく‐しん【腹心】

〘名〙
① 腹とむね。体の中枢
※浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)八「佐々木高綱を討取ったれば、腹心の害は払うたり」 〔孟子‐離婁・下〕
② 心の奥底まごころ。また、心底にある気持
※続日本紀‐宝亀一〇年(779)七月九日「天皇甚信任之委以腹心」 〔揚雄‐劇秦美新序〕
③ (「詩経周南・兔」の「赳赳武夫公侯腹心」による) 自分の胸とも腹ともたのむ人。どんな秘密でも打ち明けることができる人。
性霊集‐五(835頃)為大使与福州観察使書「使乎之人、必択腹心
読本椿説弓張月(1807‐11)前「菊池原田が股肱腹心(フクシン)家隷に」

はら‐ごころ【腹心】

〘名〙
① 腹の調子胃腸の調子。腹具合
※俳諧・天満千句(1676)九「何時にても腕をしならは〈西似〉 朝夕の食の過たる腹心〈利方〉」
② 心の中で思うこと。内心。
浮世草子好色二代男(1684)三「軒もる雫をよけて、腹心(ハラごころ)の自由に行るる様見とがめて笑ふ」

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デジタル大辞泉 「腹心」の意味・読み・例文・類語

ふく‐しん【腹心】

腹と胸。また、転じて心の奥底。「腹心を打ち明ける」
《「詩経」周南・兔罝から》どんなことでも打ち明けて相談できること。また、その人。「腹心部下
[類語]内心肺腑胸奥心奥心底しんてい心底しんそこ右腕懐刀手足

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普及版 字通 「腹心」の読み・字形・画数・意味

【腹心】ふくしん

大事な器官。また、頼りとする人。〔詩、周南、〕肅肅(しゆくしゆく)たる(としや) 中林に施(いた)る (きうきう)たる武夫は 侯の腹心

字通「腹」の項目を見る

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故事成語を知る辞典 「腹心」の解説

腹心

主君や上司の信頼が非常に厚い、家臣や部下のこと。

[使用例] あの人の腹心の部下に、ライバル会社のスパイがいたとなれば、責任をなすりつけて、いつでもあの人を社外におっぽり出せるやろ[小松左京*明日泥棒|1965]

[由来] 「詩経―周南・しゃ」の詩の一節から。「赳赳きゅうきゅうたるは、公侯の腹心(勇ましい武将は、殿様にとって腹や心臓のように大切な、信頼の厚い部下だ)」とあります。「公」は公爵、「侯」は侯爵で、当時の大貴族を指します。

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