フロンティア(英語表記)frontier

翻訳|frontier

デジタル大辞泉 「フロンティア」の意味・読み・例文・類語

フロンティア(frontier)

国境地方。辺境。特に、米国開拓時代の開拓地と未開拓地との境界地域
未開拓の分野。新分野。また、学問・技術の最先端。最先端の業績。

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精選版 日本国語大辞典 「フロンティア」の意味・読み・例文・類語

フロンティア

〘名〙 (frontier) 国境地方。辺境。特に開拓時代のアメリカ合衆国で、西部における未開拓の地域。

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改訂新版 世界大百科事典 「フロンティア」の意味・わかりやすい解説

フロンティア
frontier

ヨーロッパその他の国々では〈国境〉の意味に使われる場合が多いが,アメリカ合衆国では荒野に隣接する人口の少ない開拓地,文明社会未開社会とが接触する地域を意味することが多く,日本では〈辺境〉とか〈開拓前線〉と訳されている。アメリカ合衆国の国勢調査局の初期の表現では,人口1平方マイル当り2人以下の地域を指す語であるが,このような地域に隣接する人口1平方マイル当り3~6人,あるいは7~18人の地域もフロンティアと地域的に重ねて考えられる場合が多い。植民地時代のアメリカはヨーロッパのフロンティアであり,大西洋岸のイギリス植民地人は毛皮獣,鉱山,牧場,農場などの資源を求めて西方に移動する〈西漸運動〉を開始し,北アメリカを南北に縦断して引けるフロンティアの線および地域は西進していった。したがって,フロンティアがある地域は西部であり,西部は絶えず西方へ後退していった。しかし,1850年ごろカリフォルニアがゴールドラッシュによって太平洋岸に飛地として繁栄し始めると,この地方から東方へ金銀を求めて移動する東漸運動が起こった。1890年ごろ,西漸運動と東漸運動がロッキー山脈方面でぶつかり,フロンティア(人口1平方マイル当り2人以下の地域)を南北に線として引くことはできなくなったが,広大な島状のフロンティア地域は各地に多く残っていた。

 フロンティアの前進に伴って相次いで拡大していった西部は,農業を主要産業としたほかに鉱山業,牧畜業,木材伐採業その他の産業を発達させ,東部の産業に対して原料を供給するとともにその市場ともなったし,東部と西部とを結ぶための道路,運河,鉄道などの交通の発達を推進した。さらに約300年にわたって北アメリカに存在し続けたフロンティアはアメリカの文明や社会に大きな影響を及ぼした。アメリカ史におけるフロンティアの存在の重要性を初めて総合的に主張した歴史家F.J.ターナーの〈フロンティア学説〉を参考にしてフロンティアの意義について見てみよう。フロンティアと密接な関係にあるのが未開拓の自由地(フリーランド)である。合衆国の開拓された地域の西方に自由地の地域が絶えず存在し,そこには多種多様な資源が豊富にあって,移住者は社会のはしごをのぼる機会が多かった。このことはアメリカ人の政治上・社会上の民主主義,社会上・経済上の平等,ナショナリズムや個人主義の形成と深い関係がある。また,フロンティア地域への移動,開拓に伴い,勤勉さ,婦人の地位の高さ,使い捨て,発明やくふうの必要性,楽天主義,移動の多さ,反主知主義など,アメリカ人の国民性の特色といえるような気質(開拓者精神frontier spirit)が醸成された。その中で最も大きい影響として,イギリス伝来の民主主義がアメリカ型の民主主義に変えられたことが挙げられる。ターナーの〈フロンティア学説〉には多様な批判と支持が寄せられたが,いずれにせよ,フロンティアがアメリカ社会や文明に与えた影響力を無視することはできない。

 一般的に実態としてのフロンティアは1890年ころをもって消滅したとされるが,20世紀においてもイメージとしてのフロンティアはアメリカ国民の間に生き続けている。〈宇宙空間のフロンティア〉とか,J.F.ケネディが大統領選挙スローガンに掲げた〈ニューフロンティア〉などは国民の心情に訴えるものをもっているが,フロンティアの語には行動的な拡大主義が含意されている。なお,フロンティア地域を国内にもっていた他の国々(ソ連オーストラリアカナダブラジルなど)では,それぞれの国のフロンティアの存在と自国の社会や文明との関係をアメリカ合衆国の場合と比較して,アメリカ史の特色や自国の特色を探究する研究が盛んになっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロンティア」の意味・わかりやすい解説

フロンティア
ふろんてぃあ
Frontier

元来は「国境」または「境界」を意味する英語で、「辺境地域」の意にも用いられるが、とくにアメリカ史では、西部開拓時代に、白人の定着地域のもっとも外側にある開拓地、あるいはそれに接する未開拓地を含めて「フロンティア」とよんだ。アメリカ合衆国の国勢調査局は、1平方マイル(約2.59平方キロメートル)の土地に2人ないし6人の人口密度をもつ地域を「フロンティア」と定義し、そのような地域を結んでほぼ南北に引かれる線をフロンティア線とした。17世紀の植民地時代以来、フロンティア線は白人人口の絶え間ない西漸運動の進行に伴って西方へ移動し続け、1890年に消滅した。フロンティアがこのように長期にわたって存在したことにより、アメリカの文化や国民性は大きな影響を受けたといわれる。

[平野 孝]

『渡辺真治著『フロンティア』(1975・近藤出版社)』

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百科事典マイペディア 「フロンティア」の意味・わかりやすい解説

フロンティア

本来〈国境〉の意味だが,米国では西部の開拓地と未開拓地の境界線(フロンティア・ライン)地帯。フロンティア・ラインは17世紀には大西洋沿岸にあったが,宣教師,猟師,毛皮商人,農民等が未開拓地をめざして移住したため急速に西方に移り,19世紀半ばにロッキー山脈を越え,1890年ころ消滅した。フロンティアの西進は米国発展の象徴とされ,そこに生まれた進取・積極・実力重視などの特性をもつ開拓者精神(フロンティア・スピリット)は米国人気質の源泉と考えられている。フロンティアが米国の民主主義の発展に貢献したとしてその意義を論じたF.J.ターナーのフロンティア学説は著名。→西漸運動
→関連項目アメリカ合衆国ブーン

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「フロンティア」の解説

フロンティア
frontier

元来は国境を意味する言葉であったが,アメリカでは開拓された地域と未開拓の地域との境をさしてフロンティアと呼んだ。国勢調査局では1平方マイル(約2.6km2)当り人口2~6人の地帯をフロンティアと定義していた。大陸領土の開拓がほぼ終わった19世紀末までアメリカにはフロンティアが存在していたので,前進するフロンティアはアメリカ発展の象徴とみなされた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「フロンティア」の解説

フロンティア
frontier

北アメリカの開拓地と未開拓地間の境界線,または幅広い辺境地帯
初め毛皮を求めて猟師が,のち開拓者が西漸運動を展開し,フロンティアはたえず西に移動した。この開拓はネイティブ−アメリカン(インディアン)の抑圧を伴いつつ,白人社会における個人主義と民主主義の発達,そしてフロンティア−スピリットを生み出して,アメリカ人の国民性に影響をおよぼした。1890年ごろまでに消滅。

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とっさの日本語便利帳 「フロンティア」の解説

フロンティア

西部開拓期アメリカの、開拓最前線たる辺境地帯。今日なお国民性の特質をなす、進取、自由の気概に満ちたフロンティア・スピリットを育んだ。この西漸運動、領土の拡大を、神から与えられた定めだとする考え方は、後に「マニフェスト・デスティニー(明白な宿命)」と名付けられる。

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デジタル大辞泉プラス 「フロンティア」の解説

フロンティア〔キャラクター〕

1989年の国民体育大会(北海道はまなす国体)の公式マスコット。

フロンティア〔タバコ〕

JTが製造、販売するタバコのブランド。

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世界大百科事典(旧版)内のフロンティアの言及

【アメリカ合衆国】より

…地域間移動についてみると,全体的傾向は西への人口移動である。この動きは,合衆国の西方への版図拡大に伴うものであり,歴史上西漸運動の形をとって,ことに南北戦争後から1890年ころのフロンティア消滅までの間に顕著にあらわれた。移住民の主体は白人であるが,彼らの開拓に伴って先住民インディアンも西方への移動を余儀なくされた。…

※「フロンティア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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