バーユ(英語表記)Vāyu

改訂新版 世界大百科事典 「バーユ」の意味・わかりやすい解説

バーユ
Vāyu

ヒンドゥー教風神。〈風天〉と漢訳される。バーユまたはバータtaは,すでにインド最古の聖典リグ・ベーダ》中でたたえられる代表的な自然神の一つである。バーユは多数の駿馬の引く,光り輝く車に乗り,ときにはインドラ帝釈天)を御者とする。彼は敵を駆逐し,名声子孫家畜財宝を授けるとされる。後代,ヒンドゥー教において,バーユは北西を守護する方位神とされた。仏教でも取り入れられ,十二天の一つ風天となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーユ」の意味・わかりやすい解説

バーユ
ばーゆ
Vāyu

古代インドの風神。インド最古の聖典『リグ・ベーダ』の自然神の一つ。風神はまたバータvātaともよばれる。バーユもバータも、一般には単に風の意味で用いられている。『リグ・ベーダ』において、バーユは駿馬(しゅんめ)たちの引く光り輝く車に乗り、ときとしてインドラ(帝釈天(たいしゃくてん))を御者とするとされる。バーユは浄化作用をもつとみなされ、人々を災禍から解放し、敵を駆逐し、名声、子孫、家畜、財宝を授けるとされる。彼はまた、神聖なる飲料ソーマをほかのだれよりも先に飲む権利を有するとされる。一詩節において、バーユはプルシャ原人)の生気から生じたといわれる。これは後代の生気に関する神秘的な思弁の基礎となった。

上村勝彦

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バーユ」の意味・わかりやすい解説

バーユ
Vāyu

サンスクリット語で風のこと。また風の背後にひそむ力を神格化した風神の名。風神としてのバーユは『リグ・ベーダ』以来,重要な神格の一つであり,ベーダでは特にインドラと関連して述べられる場合が多く,天地に光明と光輝を与え,生きとし生けるものを守護し,邪悪なものを破る。ヒンドゥー教では北西を守護する神とされることもあるが,概してその地位は低い。また,叙事詩ラーマーヤナ』では,神猿であるハヌマーンの父とされ,『マハーバーラタ』ではビーマの父ともされる。

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百科事典マイペディア 「バーユ」の意味・わかりやすい解説

バーユ

ヒンドゥー教の風神。バータとも。プルシャの気息から生まれ,光り輝く車に乗って天空を駆け,ときにインドラを御者とする。仏教では十二天の一,風天。

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