ジェレヌク(英語表記)gerenuk
Litocranius walleri

改訂新版 世界大百科事典 「ジェレヌク」の意味・わかりやすい解説

ジェレヌク
gerenuk
Litocranius walleri

四肢と首が著しく細長く,小さなキリンを思わせるアンテロープの1種。ジェレヌクの名は,ソマリ語で〈キリンの首〉の意。偶蹄目ウシ科の哺乳類。体に比較して頭部,とくに顎口(がつこう)部が小さく,雄には,はじめ後方に湾曲し,次いで上方にのびる長さ32~44cmのしっかりしたつくりの角がある。体色は白色の腹面を除いて全身赤褐色。ただし,背中側は暗色で,明色の体側面とコントラストをつくる。大きな目の周囲は白色。体長140~160cm,尾長22~35cm。体重31~52kg。

 東アフリカの乾燥地帯に生息し,アカシアなどの灌木の葉を長くのびる舌と,よく動く唇でしごき取って食べる。後肢で直立できるため高さ2mくらいまでとどく。水は飲まず草や地面にある食物は食べない。夜行性。雄は,眼下腺の分泌物で標識してテリトリーをつくり,2~7頭の雌と子とともに生活する。ときに30頭を超える群れも見られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェレヌク」の意味・わかりやすい解説

ジェレヌク
じぇれぬく
gerenuk
[学] Litocranius walleri

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。エチオピアからタンザニアまでのアフリカ東部に分布し、茂みが点在する乾燥した草原や半砂漠に生息する。肩高90~105センチメートル、体重35~50キログラム。角(つの)は雄にだけあり、長さ25~44センチメートル。頸(くび)が長く、体上面は濃い栗(くり)色または赤褐色で、側面は淡く下面は白色。単独か、つがい、ときに3~10頭の小群で暮らし、アカシアなどの葉や芽、若い枝を食べる。しばしば後ろ足だけで立ち上がり、高さ2メートルぐらいにある葉をむしる。ほとんど水を飲まずに生活できる。子は、雨期になって若葉が出るころ生まれる。1産1子。頸が長いため、敵の接近をすぐ感知するが、走るのはガゼルほど速くなく、近年乱獲により急激に数が減っている。

[今泉忠明]


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世界大百科事典(旧版)内のジェレヌクの言及

【レイヨウ(羚羊)】より

…多くは砂色で,アフリカとアジアに分布する。インド産で雄の体が黒いブラックバックAntilope cervicapra,警戒,逃走,遊びのときに高く跳びはねる習性をもつスプリングボックAntidorcas marsupialis,中央アジア産で時速96kmで走れるモウコガゼルProcapra gutturosa,多くの肉食獣にねらわれるグラントガゼルGazella granti,非常に警戒心が強く,やぶの中で生活するディバタグAmmodorcas clarkei,あごが長く,しばしば後肢で立ち上がって高いところの葉を食べるジェレヌクLitocranius walleriなど6属18種がある。(7)ダイカー亜科Cephalophinae きわめて小型で,角はふつう雌雄にあるが耳よりも短く,頭頂の冠毛でほとんど隠れている。…

※「ジェレヌク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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