改訂新版 世界大百科事典 「カンゾウ」の意味・わかりやすい解説
カンゾウ (甘草)
Glycyrrhiza uralensis Fisch.
根や茎の基部が漢方薬で甘草と呼ばれ重用されるマメ科の多年草。カンゾウ属Glycyrrhizaの2,3種が同じ用途に利用される。これらを英名でlicoriceという。高さ数十cm,ときには1mになり,根茎は円柱状で,それにつづく主根は深く土中にのびる。直立する地上茎には白色の短毛や腺毛がある。葉は互生,奇数羽状複葉で4~8対の小葉がある。花は6~7月,腋生(えきせい)した花梗の先端に密集してつき淡紫色,1.5~2cmほど。豆果は長楕円形で鎌状に曲がり,長さ6~8cm,褐色のとげ状腺毛を密生する。種子は黒色で光沢がある。同属で,果実に腺毛のないG.glabra L.(中国名は洋甘草,欧甘草)や,G.kansuensis Chang et Peng(中国名は黄甘草)なども前種と同様に用いられる。カンゾウはシベリアから中国北部に,G.glabraはヨーロッパ南部からアフガニスタンに分布している。甘みはサポニン,グリチルリチンglycyrrhizin(ショ糖の150倍の甘みがある)やブドウ糖を含有していることによる。そのほかにフラボノイドflavonoidも含み,鎮咳(ちんがい),鎮痛や利尿作用がある。そのため風邪や咽喉の病気,さらに胃腸薬として用いられている。また漢方薬の甘味づけや錠剤の形成薬にも利用されている。日本ではしょうゆの甘味料として大量に消費され,また人工甘味料としての用途が広い。
なおカヤツリグサ科のカンエンガヤツリやユリ科のキスゲ類もそれぞれカンゾウ(莞草,萱草)と呼ばれるが,これらについては〈カンエンガヤツリ〉や〈キスゲ〉の項目を参照されたい。
執筆者:堀田 満+新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報