アラブ連盟(読み)アラブレンメイ(英語表記)League of Arab States

デジタル大辞泉 「アラブ連盟」の意味・読み・例文・類語

アラブ‐れんめい【アラブ連盟】

アラブ諸国の独立と主権擁護を目的として、1945年にエジプト・シリア・レバノン・イラク・ヨルダンサウジアラビアイエメンの7か国で結成した同盟。のち、パレスチナも含め加盟国は22となったが、1990年のイラクのクウェート侵攻で分裂。本部はカイロ。

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精選版 日本国語大辞典 「アラブ連盟」の意味・読み・例文・類語

アラブ‐れんめい【アラブ連盟】

(Arab League の訳語) 一九四五年、カイロの汎アラブ会議で、アラブ民族の独立と主権の確保、平和と繁栄の中立地帯の形成を目的とし、エジプト、シリア、レバノン、イラク、トランスヨルダン(現ヨルダン)、サウジアラビア、イエメンの七か国が結成した地域機構。加盟国は、PLO(パレスチナ解放機構)を含め二二カ国に到っている。最高意思決定機関はアラブ首脳会議。本部カイロ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラブ連盟」の意味・わかりやすい解説

アラブ連盟
あらぶれんめい
League of Arab States

アラブ諸国の地域協力機構。1945年3月22日、19世紀末以来アラブ民族主義の宿願であったアラブの統一を目ざし、エジプト、イラク、サウジアラビア、シリア、レバノン、イエメン、ヨルダンの7か国を原加盟国として発足。年2回の閣僚級理事会のもとに、政治、経済、軍事、人権など11の常任委員会をもつほか、中央事務局が統轄するイスラエルボイコット事務局など各種の機関を有する。当初は経済面に力点が置かれたが、1948年のイスラエル建国、1952年のエジプト革命などの影響を受け、「汎(はん)アラブ主義」に基づく政治・軍事面での活動が強化されるに至った。

 連盟内の比較的順調な経済協力とは対照的に、1964年エジプトのナセル大統領の呼びかけで第1回首脳会議が開催されたのちも、サウジアラビアなど保守的な王制諸国とエジプトなど急進的な共和制諸国との対立のため、政治面ではしばしば機能麻痺(まひ)を体験してきた。1967年の第三次中東戦争敗北を機に開催された第4回首脳会議は「不講和、不承認、不交渉」の対イスラエル三原則を採択した。1977年エジプトのサダト大統領が対イスラエル和平のイニシアティブをとり、1979年エジプト・イスラエル平和条約に調印したが、強硬派諸国の反発を招き、エジプトの連盟参加資格停止が決議された。エジプトの連盟復帰が実現したのは1989年のことである。しかし、1980年のイランイラク戦争、1990~1991年の湾岸戦争に際しても連盟は共同歩調をとることができなかった。

 1981年にはペルシア湾に面するサウジアラビアなど6か国からなる湾岸協力会議GCC)が、1989年にはリビア、アルジェリアなど北アフリカ5か国によるアラブ・マグレブ連合(AMU)が発足したことも、アラブ連盟の地盤沈下を物語るといえよう。2009年時点で、加盟国は21か国とPLO(パレスチナ解放機構)である。

[黒柳米司]

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改訂新版 世界大百科事典 「アラブ連盟」の意味・わかりやすい解説

アラブ連盟 (アラブれんめい)
League of Arab States

アラブ諸国間の関係強化,共同利益の追求・調整を目的とする地域機構。アラビア語の正称はJāmi`a al-Duwal al-`Arabīya。1945年3月,エジプト,イラク,シリア,レバノン,サウジアラビア,イエメン,トランス・ヨルダン(現,ヨルダン)の7ヵ国がカイロで会議を開き,そこで締結された連盟規約に基づいて結成された。その後,リビア,モロッコ,チュニジア,スーダン,アルジェリア,クウェート,バーレーン,カタル,オマーン,アラブ首長国連邦,モーリタニア,ソマリア,ジブチ,コモロも加盟,2005年現在,加盟国はパレスティナ解放機構を含めて22である。

 規約はアラブ諸国の主権の擁護,紛争の防止,また経済・技術・文化などの分野での相互の提携・協力を目的とすることを定めている。加盟国は,自己の賛成した理事会での決議にのみ拘束される。連盟の最高機関は,加盟国代表をもって構成される理事会で,その下に,政治,経済,社会,文化,法律などの常設委員会をもつ。本部はカイロ(エジプトの資格停止期間中は,チュニス)。連盟は,加盟国に共通の議論の場を提供し,パレスティナ問題中東戦争などの諸問題で,アラブの政治的立場を対外的に示す機能をもったが,60年代以降,イエメン戦争をはじめアラブ諸国間の紛争と対立が強まるにつれ,問題はアラブ首脳会議という形で処理されるようになってきている。

 結成以来,連盟内でのエジプトの発言力は大きかったが,70年にはアラブ統一の旗手であったナーセルを失い,79年3月には,エジプト・イスラエル平和条約締結により,連盟はエジプトの資格停止を決定した。しかし,エジプトを欠いた連盟は,たび重なるイスラエルの強硬政策(エルサレム併合,レバノン侵攻など)に対抗する力を結集できず,またアラブ域内の対立を調整する機能も低下したため,アラブ穏健派諸国からエジプトの連盟復帰を求める声が強まり,89年5月復帰した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラブ連盟」の意味・わかりやすい解説

アラブ連盟
アラブれんめい
Arab League

アラブ諸国の地域協力機構。1945年3月エジプト,シリア,レバノン,イラク,ヨルダン,サウジアラビア,イエメン(イエメン=アラブ共和国)の 7ヵ国により結成され,同年 10月に発足した。加盟各国の主権の擁護,相互協力,中東の安全保障確保のため,政策の調整をはかることを目的とする。のちにリビア,スーダン,チュニジア,モロッコ,クウェート,アルジェリア,南イエメン(イエメン民主人民共和国),バーレーン,モーリタニア,オマーン,カタール,ソマリア,アラブ首長国連邦,ジブチおよびパレスチナ解放機構 PLOが加盟,1991年5月南北イエメンが国家統合,1993年コモロが加盟し,2012年現在は 21ヵ国と 1機構から構成される。主要機関は首脳会議,理事会,事務局で,理事会には政治,文化,社会,保健,経済,法律,通信,情報,石油,財政,行政,連絡担当の常任委員会が付置され,ほかにアラブ郵便連合,アラブ電気通信連合,アラブ放送連合など 21の専門機関がある。事務局はエジプトのカイロに置かれていたが,エジプトが 1979年3月にイスラエルと平和条約を締結して資格停止の処分を受け,チュニジアのチュニスに移された。1989年5月モロッコのカサブランカにおける首脳会議でエジプトの資格停止処分が撤回され,1990年3月事務局のカイロ復帰も決定された。イスラエルと関係をもつ企業などにボイコットの指令を出す委員会も設けられているが,エジプトの復帰後はボイコットはしだいにゆるめられつつある。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アラブ連盟」の解説

アラブ連盟(アラブれんめい)
Jāmi‘ al-Duwal al-‘Arabīya

アラブ諸国の主権擁護,関係強化などをうたうアレクサンドリア議定書にもとづき,1945年エジプト,イラク,サウジアラビアなど7カ国で結成される。現在ではパレスチナを含む21カ国1地域が参加する国際機関になっている。64年からは最高意思決定機関としてアラブ首脳会議が開催される。本部はカイロ(エジプト,イスラエルの和解をきっかけにエジプトが資格停止にされたため,一時期本部もチュニスに移るが,現在はカイロに復帰)。70年代頃までは中東和平などで大きな役割を演じたが,その後イラン‐イラク戦争湾岸戦争などで加盟国内での対立が顕在化,機能・影響力が大幅に低下している。

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百科事典マイペディア 「アラブ連盟」の意味・わかりやすい解説

アラブ連盟【アラブれんめい】

1945年,アラブ7ヵ国代表とパレスティナ地区のアラブ人代表の間で結ばれた地域機構。相互の独立・主権を尊重し,経済・社会・文化等の協力と安全保障を目的とする。加盟国代表とパレスティナ解放機構(PLO)の代表で組織する理事会が最高機関。その下に各種の委員会と常設事務局がある。本部はチュニス。加盟国22(1995年)。
→関連項目キャンプ・デービッド合意中東

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旺文社世界史事典 三訂版 「アラブ連盟」の解説

アラブ連盟
アラブれんめい
Arab League

第二次世界大戦中の民族運動の発展を背景に,1945年3月に結成された西アジア・北アフリカのアラブ民族の国際機関
エジプト・シリア・レバノン・イラク・ヨルダンの5か国にサウジアラビアとイエメンが加わって成立。本部をカイロに置き,アラブ民族の独立達成と文化的連帯を目的とした。その後,リビア・スーダン・モロッコ・チュニジア・クウェート・アルジェリア・南イエメン・カタール・バーレーン・オマーン・アラブ首長国連邦・モーリタニア・ソマリアが加盟(パレスチナ解放機構〈PLO〉も準加盟)。イスラエル共和国とは,パレスチナ戦争以後,対立を続けていたが,いっぽうで連盟内部の対立問題もかかえている。

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