RNP AR(読み)あーるえぬぴーえーあーる(英語表記)RNP AR

知恵蔵 「RNP AR」の解説

RNP AR

航空機が滑走路着陸する際に誘導する方式の一つで、高規格RNAV進入方式とも呼ばれる。地上からの電波誘導を受けず、GPS(全地球測位システム)信号などによって定められたルートに従って滑走路に進入する。進入ルートを従来よりも柔軟に設定できるため、着陸までの経路を短縮し時間や燃料を節約することが期待できる。また、空港側に特別な地上設備を新たに設ける必要がない。そのため、これに対応するシステムを搭載する航空機やRNP ARを設定する空港が増加すると見られている。
民間の航空機は、地上に設置された無線標識(超短波全方向式無線標識・VORや距離測定装置・DME)などの電波によって位置を確認できる電波航路内を航行するのが一般的だった。1990年代になると、軍事用として開発されたGPSが、民間機の安全のために開放された。GPS等を利用する航法用機上コンピューターなど飛行管理装置(FMS)を備えることで、地上の無線施設に依存しない飛行ルートが設定できる。FMSを使ったこのような航法をRNAV(aRea NAVigation)と呼ぶ。一般的なRNAVは洋上以外では管制官によるレーダー監視空域を航行することになる。ただし、経路が維持されていることを監視し、経路を外れると警報する機能を備えた航空機については、洋上以外でもレーダー監視空域外の飛行が認められる。特にこのような飛行が認められる航法性能要件(Required Navigation Performance)をRNPといい、滑走路に進入する際の航法として採用する上で、機体装置や乗務員訓練などについて、国からの特別な許可を必要(Authorization Required)とする方式をRNP ARアプローチという。
航空機が着陸する際に、天候が良好で前方の航空機と十分な間隔がとれれば、目視で滑走路に着陸する視認進入方式ビジュアルアプローチができる。しかし、雨や霧などで視界が悪いときは、一般に計器着陸装置(ILS)による着陸が行われる。ILSアプローチでは、地上から滑走路の直線的な延長上に電波を発射し、航空機はこの電波に合わせて方向や降下角を定めて滑走路に進入する。ただし、これに合わせるためには、到着経路から航空機の進行方向を滑走路の延長線上になるように旋回し、相当の距離を直進してから滑走路に進入する必要がある。これに対して、RNP ARアプローチならば、到着経路から滑走路に進入するために通過すべき地点を結んだ経路をFMSが計算し、自動操縦でこの経路のとおりに旋回してそのまま滑走路に進入できる。また、空港によっては周辺の地形などの理由でILSアプローチのための誘導電波が設定できない場合もあるが、RNP ARでは新たな地上設備をつくる必要がない。このため、最短のルートで着陸したり、複雑な地形の空港周辺で山間を縫うように旋回しながら着陸したりできる。その結果、飛行距離や時間が節約でき、滑走路の延長下に広がる市街地をできるだけ避けた着陸ルートをとって騒音対策に役立てることができる。また、欠航遅延を減らすことができる。2012年から東京国際空港などで実験的な運用が開始され、現在では地方空港にも運用が広がっている。

(金谷俊秀 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報