(読み)えり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「魞」の意味・わかりやすい解説


えり

網地のかわりに、竹や木材などでつくられた垣網(かきあみ)や簀(す)を張り立てて水産生物の通路を遮断し、囲網(かこいあみ)へ誘導する定置漁具。この漁具は、風波に対して弱いので湖沼や河川に設置される場合が多いが、海面でも風波の穏やかな内湾の浅所に設置される。垣網の長さ2~3メートルの小規模のものから、1キロメートルに及ぶ大規模なものもある。淡水域に仕掛けた場合は、簀の目が3ミリメートル以下のものは、エビや小アユなどを漁獲し、15ミリメートル以上のものはコイ、フナ、ウナギなどを漁獲する。内湾では、アジ、イワシ、サバ、エビなどを漁獲する。日本では、琵琶(びわ)湖の魞漁が有名である。フィリピン、タイなど東南アジアの沿では盛んであり、マグロ、カツオ、アジ、サバ、イワシやタイ類などを対象としている。

[吉原喜好]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「魞」の意味・わかりやすい解説

えり【魞】

岸から直角の方へ竹簀を並べ立てて,さらにその先端部を囲むように逆V字形に竹簀を設置した陥穽漁具。岸に沿って回遊する魚が〈ハリズ〉という竹の障壁にぶつかって誘導され,沖の側に設けた狭い〈ツボ〉という部分に入りこむことになるので魚偏に〈入る〉という国字が作られた。日本では琵琶湖のものが有名(図)。特定の〈えり師〉という技能集団が,冬の農閑期湖岸の各地を泊まり歩いて設置する。中国の東北部(遼寧省)に〈迷封(ミーフオン)〉という同型のものがあり,これが日本に渡来したものといわれるが,同様のものは東南アジア各国にも普遍的に見られるので,本来,遠浅海岸において自給用の魚を得るための漁法であったものと思われる。

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