食込(読み)くいこむ

精選版 日本国語大辞典 「食込」の意味・読み・例文・類語

くい‐こ・む くひ‥【食込】

〘自マ五(四)〙
① 他の物の中に深く入りこむ。めりこむ。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「餠の中へ堅く食ひ込んで居る歯を」
② 他の領域、範囲にはいりこむ。侵入する。
明暗(1916)〈夏目漱石〉一五二「自分の手の届く所から段々に食(ク)ひ込(コ)んで行かうといふんだ」
③ 強いまなざしで見つめる。食い入る。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「手ばしこく文典を開けて〈略〉ぴったり眼で喰込んだ〈略〉やうな面相(かほつき)をして」
④ 収入が少ないのに、支出が多いため、所持金やもとでが減る。
浮世草子日本永代蔵(1688)二「三十四五度も商売かへられしうちに今は残らず喰込(クヒコミ)て何をすべきたよりもなく」
⑤ 捕えられることをいう、盗人仲間の隠語
花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「武田さんは名古屋で喰(ク)ひ込(コ)み掛ったから豊橋の在まで逃げて来て」

くらい‐こ・む くらひ‥【食込】

[1] 〘他マ四〙
① 勢いよく口に入れる。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)四「弁慶といふくらひ抜(ぬけ)の候へば、いか程くらひ込(コマ)んも知れず」
② 迷惑な事を負担する。厄介な事をしょいこむ。
※雑俳・柳多留‐三(1768)「その跡を大屋のむす子くらいこみ」
[2] 〘自マ五(四)〙
① はまりこむ。熱中して深入りする。
※雑俳・柳多留‐三(1768)「兄弟はさがみ女にくらい込み」
② 捕えられて牢獄刑務所にはいる。拘引される。
※歌舞伎・夢結蝶鳥追(雪駄直)(1856)三幕返し「明日にも悪事のばれた上、喰(クラ)ひ込(コ)んだら命の終り」

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