飛鳥川・明日香川(読み)あすかがわ

精選版 日本国語大辞典 「飛鳥川・明日香川」の意味・読み・例文・類語

あすか‐がわ ‥がは【飛鳥川・明日香川】

[一] 奈良県明日香地方を流れる川。高取山を源とし、大和川に入る。全長二八キロメートル。昔は流路がたびたび変わったところから、定めなき世のたとえとされ、また、「あす」という音から、「明日(あす)」にかけても用いられた。歌枕。
万葉(8C後)一一・二七〇一「明日香川(あすかがは)明日も渡らむ石橋の遠き心は思ほえぬかも」
[二] 能楽。四番目物。作者未詳。金剛喜多流。母親に生き別れた少年友若は、飛鳥川のほとりで尋ねる母と再会する。
[三] 茶入れの名。瀬戸、金華山窯(がま)製、加藤藤四郎(三代)作と伝える。土は薄赤色で口作り、ひねり返しは薄作、きゃしゃな細工。また、この様式を模した茶入れ。小堀遠州が若いころ堺でこの茶入れを見、後年また伏見でこれを見たとき、非常に古くなっていたので、「古今‐三四一」の「昨日といひけふとくらしてあすかがは流れて早き月日なりけり」の歌にちなんで命名したという。
随筆槐記(茶道古典全集所収)‐享保一二年(1727)五月一八日「御茶入 飛鳥川」
[語誌](1)万葉集の恋の歌では、(一)の例のように「明日」にかける例も見えるが、流れの早いこと、また水かさの多いことで恋の妨げになるものとして歌われることが多い。
(2)平安時代になると、変はる、変はらぬ、といった語を導くようになる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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