顔見世物(読み)かおみせもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顔見世物」の意味・わかりやすい解説

顔見世物
かおみせもの

顔見世狂言の一部であった舞踊劇をいう。江戸の顔見世狂言の構成中,四立目は全体の筋立てとの関係から切り離された舞踊劇を新作した。いわゆる狂言浄瑠璃といわれる芝居がかりの所作事で,宝暦 (1751~64) 以後の豊後節から派生した常磐津,富本の発達とともに展開したもの。また三立目の一部や大詰の前に丹前風の長唄舞踊を挿入したり,二番目大切 (おおぎり) に再び浄瑠璃の舞踊劇を新作したりしたものも含める。多くは妖怪,動物の化身樹木の精や,謀反人を題材とする。常磐津の『積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 』『戻駕色相肩 (もどりかごいろにあいかた) 』,長唄の『隈取安宅松』『吉原雀』,富本,清元の『鞍馬獅子』,および各流の「山姥物 (やまんばもの) 」「蜘蛛物」などが著名。2世西川扇蔵 (振付) ,1世中村仲蔵,9世市村羽左衛門らが名曲を残した。

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