(読み)オトガイ

デジタル大辞泉 「頤」の意味・読み・例文・類語

おとがい〔おとがひ〕【×頤】

[名・形動]
あご。あご。
減らず口。また、減らず口をたたくこと。また、そのさま。
「えらい―なわろぢゃ」〈滑・膝栗毛・七〉
[類語]

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精選版 日本国語大辞典 「頤」の意味・読み・例文・類語

おとがい おとがひ【頤】

〘名〙
① 下あご。あご。⇔腭(あぎ)
※霊異記(810‐824)下「彼の禅師(オトカヒ)の右の方に大きなる黶(ふすべ)有り〈真福寺本訓釈 ヲトカヒ〉」
② (機能上関係が深いところから転じて) 「くち(口)」をいう。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六「ムウ、ハハハハ、おとがひ明いた任(まか)せに。こなたに知行は貰わぬ」
③ (形動) さかんにしゃべること。広言、悪口などをはくこと。また、そのさま。おしゃべり。
浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「返報する、覚へておれと、へらず口にて逃出す。立寄る人々どっと笑ひ、踏まれてもあのおとがひ」
[語誌]主に人間の顔を外側からながめたときの下顎を表わすのが本来の用法である。アギ、アギトに比べ中古・中世を通じて使用頻度が高く、顎(あご)を意味する代表的な語であった。この状況は近世前期の上方では保たれたが、近世後期の江戸ではオトガイの使用は減少する。この時期、アゴが下顎の意味でも使われるようになると、アゴとオトガイとの意味上の区別が失われ、オトガイは顎の代表語の地位をアゴに譲った。→あぎあぎと

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「頤」の意味・わかりやすい解説


おとがい

下顎下縁前端正中部の高まりで,いわゆる顎先のこと。この高まりは,現生人類を含む新人類において成立したもので,学者によれば,頤があることによって,新人類である証明とみなす者もいる。原始人類から現生人類にいたる過程において,下顎骨は縮小していく傾向にあるが,特に歯槽部の退縮が目立つ。そのわりに下顎骨底は退縮が著しくなかったが,結果として,頤部分が取残されたように突出する。類人猿,および猿人から旧人類までは,下顎骨にこの頤がみられない。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【あご(顎)】より

…脱臼後は早く整復する必要がある。
[おとがい(頤)]
 下顎の正中部,下唇の下に,横走する溝をへだてて突出する部分である。英語でchinと呼ぶ部分であるが,日本語には〈おとがい〉といういささか古びた言葉しかなく,日常は〈あご〉や〈下あご〉で不正確ながらこの部分を指すことが多い。…

※「頤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」