隠れ脱水(読み)カクレダッスイ

デジタル大辞泉 「隠れ脱水」の意味・読み・例文・類語

かくれ‐だっすい【隠れ脱水】

気づかないうち脱水症になりかけている状態。本格的な脱水症や熱中症への進行を予防するために、適度な休息水分補給を心がける必要がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「隠れ脱水」の意味・わかりやすい解説

隠れ脱水
かくれだっすい

特段の症状はなく、本人も気づかないうちに、脱水症の一歩手前の危険な状態におちいることをさす。脱水症は、人体大部分(新生児8割~高齢者5割)を占める水分体液)と、水に溶けているナトリウムカリウムカルシウムなどの電解質が不足することである。水分が不足すると血液量が減少し、臓器への栄養分供給や老廃物回収機能の低下を招く。また、電解質が不足すると、体温調節ができなくなるなど、神経や筋肉、臓器などの正常機能を維持できなくなる。脱水症が重症化すると、最終的には死に至る。

 高温環境下で、激しい運動や労働をして発汗し、頭痛けいれん、意識障害へと急激に進む熱中症は、脱水症の高温版である。高温多湿の室内での生活でもおきる。総務省によると2013年(平成25)6月から9月までの間に、全国で5万8729人が熱中症で救急搬送された。このほか、病気による発熱下痢嘔吐(おうと)で水分や電解質を失っても脱水症になる。

 もともと体の水分量が少ない高齢者は脱水症になりやすいが、その手前の隠れ脱水になる危険性はさらに高い。成人は毎日1500~2500ミリリットルの水分を尿や汗などで失い、その分を飲み物、食物から補っている。何らかの原因でこのバランスが崩れると、隠れ脱水から脱水症へと症状が進む。

 高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓(じんぞう)病の持病があり、栄養不良気味で、気密性の高い住宅(マンションなど)に住んでいる一人暮らしの高齢者が要注意とされている。高温多湿の日が続き、大量の汗をかき、下痢や嘔吐があると、隠れ脱水におちいる可能性は高まる。食欲が低下したり、どうも元気が出ない、頭痛や筋肉痛がある、微熱が続くなどの症状がある場合には、医療機関で診療を受ける必要がある。

 子どもの隠れ脱水は気づきにくい。いつもより飲食量が落ちたり、笑わない、機嫌が悪いなどの変化がみられるときは、隠れ脱水の可能性があり、水分の補給が重要である。

[田辺 功]

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