金属粉(読み)きんぞくふん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金属粉」の意味・わかりやすい解説

金属粉
きんぞくふん

大きさが約300マイクロメートル以下の金属の細かい粒子の集まり。それ以上の大きさの金属粒(ショットshot)と区別する。現在生産されている金属粉の大部分粉末冶金(やきん)工業で使用され、機械部品や工具材料、磁性材料などの工業製品の原料となる。そのほか、顔料や、化学工業用の触媒や金属還元剤、酸化熱を利用する鉄粉懐炉、花火の光輝剤などに使用される。金属粉の性質は、その純度、表面での分子吸着や化学反応のおこりやすさを表す表面活性度や形状、どのような大きさの粒子が混じっているかを表す粒度分布、粉末のかさばりの程度を表す見かけ密度、流れやすさなどで評価される。

 金属粉の上記の性質はその製法に由来する。現在、金属粉は使用目的により多種多様な方法でつくられているが、原理的には、たたいたり、つぶしたり、削ったりする機械的粉砕法、溶けた金属に水流ジェットをぶつけて粉化したり、霧吹きと同じ原理で噴霧する方法、昇華や電気分解、還元反応、化合物分解、腐食などを利用する物理化学的方法に大別される。機械的に粉砕した金属粉には角張ったもの、鱗片(りんぺん)状のもの、扁平(へんぺい)なものなどがあり、一般に緻密(ちみつ)である。粉砕効果をあげるためにもろい化合物にしておいて粉砕し、その後微細な化合物粉を熱分解させて金属粉にすることもある。溶けた金属を噴霧してつくった銅やスズ粉は球形あるいは涙滴状を呈し、流れやすい性質がある。金属イオンの溶けた水溶液の電気分解によりつくった粉は樹枝状である。粉末冶金工業で広く用いられているスウェーデンのヘガネス鉄粉は、天然磁鉄鉱の粉をコークスで還元してつくったもので、海綿状の粉末である。鉄カボニル化合物を加熱分解してつくるカボニル鉄粉は純度が高く微細な球形粉である。金属蒸気から水蒸気の結露と同じ原理で析出させた粉は、大きさが0.1マイクロメートル以下のきわめて微細な球形粉で、これは超微粉とよばれ特異な性質を示すため、昨今その応用が期待されている。

[渡辺龍三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例